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TCFDに基づく情報開示
リンテックグループでは気候変動が自社の事業活動にさまざまな影響を及ぼすことを認識し、これを重要な経営課題の一つとして捉えています。リスク管理体制や各リスクへの対応を強化するとともに、新たな事業機会を見いだしていくことなどによって、持続的成長とサステナブル社会実現への貢献を目指していきます。気候変動への対応に関する情報開示については、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿って積極的に行い、ステークホルダーの皆様とのエンゲージメントを通じて、さらなる企業価値向上に努めていきます。
ガバナンス
気候変動関連課題への対応を含むサステナビリティに関する具体的な取り組み施策については、「サステナビリティ委員会」(原則年4回開催)において、対応方針や実行計画についての議論と進捗状況の監督を行っています。同委員会は社長が委員長を務め、全取締役および下部委員会の推進担当役員が参加しており、討議結果は取締役会において報告される体制としています。
気候変動関連課題は「TCFD分科会」を通じて「環境委員会」で一次評価を実施し、「サステナビリティ委員会」において最終的な評価を行います。課題への対応策は各拠点で実行・管理され、対応状況は「環境委員会」にて取りまとめ、「サステナビリティ委員会」において全取締役および推進担当役員に報告されています。
戦略
リンテックグループでは、気候変動に伴うさまざまなリスク・機会を事業戦略策定上の重要事項の一つとして捉えており、以下の二つのシナリオを設定して、2030年(中期)および2050年(長期)までの国内事業を対象としたシナリオ分析を実施しています。その結果、下表のようなリスクと機会を特定しました。これらの気候変動に関連するリスクと機会の対応策を当社グループの長期ビジョン「LSV 2030」の取り組みに反映させるとともに、今後は海外事業も含め、より長期的視点での分析を進めていきます。
表は横にスライドして御覧いただけます。
+4℃シナリオ | +2℃または1.5℃以下シナリオ | ||
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参照シナリオ | 移行リスク | 国際エネルギー機関(IEA)による移行シナリオ | |
「公表政策シナリオ(STEPS)」*1 | 「持続可能な開発シナリオ(SDS)」 「Net Zero Emissions by 2050(NZE)」*1 |
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物理的リスク | 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による気候変動予測シナリオ | ||
「RCP8.5」*2 | 「RCP2.6」*2 | ||
経済産業省 「トランジション・ファイナンス」に関する技術ロードマップ | |||
当社が想定する社会像 |
【政策は現状のまま進み、気候変動が進行する社会】
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【脱炭素社会実現に向け、積極策を取る社会】
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- *1出典:IEA「World Energy Outlook 2021」・「World Energy Outlook 2022」
- *2出展:IPCC「第5次評価報告書」
- *3ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、高断熱化・高気密化・高効率化・太陽光発電設備の導入などにより年間のエネルギー消費量を実質的にゼロ以下にする建築物、住宅のこと
対象範囲
本シナリオ分析の対象は、国内事業としています。今後実施するシナリオ分析において、海外事業への展開も検討していきます。
時間軸
リンテックグループの長期ビジョンおよびSDGsの最終年度である2030年までを「中期」、当社グループがカーボンニュートラル達成の目標としている2050年までを「長期」と設定しています。また、将来的な財務影響の時間軸については、2030年時点を分析対象の中心としています。
+2℃以下の世界
移行リスク
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分類 | 主なリスク | 時間軸 | 対応策 | |
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政策・法規制 | カーボンプライシング | 温室効果ガス排出やエネルギー使用に関する法規制強化(炭素税導入など)に伴う対応コストや製造コストの増加および価格転嫁した場合の価格競争力低下 | 中期~長期 |
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CO2排出規制の強化 | 省エネ・CO2排出量削減に向けた設備投資の増加による投資未回収の発生 | 中期~長期 |
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温室効果ガス排出に関する情報開示レベルの高度化・義務化による対応負担増 | 中期~長期 |
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VOC排出規制の強化 | 溶剤製品の売上減少や仕様変更 | 中期~長期 |
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技術 | 新技術開発 | 気候変動対応製品の開発遅延や従来製品が環境対応ニーズを満たせなかった場合のビジネス機会逸失 | 中期~長期 |
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新技術の研究開発、知的財産権の確保、共同開発などの遅れによる競争力低下 | 中期~長期 |
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市場 | エネルギーコストの変化 | 原油・石油由来エネルギーの価格上昇による製造コスト・光熱費の増加 | 中期 |
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重要製品の変化 | 顧客ニーズの環境配慮製品への移行による主要製品の受注減少 | 中期~長期 |
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原材料調達の変化 | 脱石化原料の加速に伴うサプライヤーへの依存度の上昇による製品供給の不安定化 | 中期~長期 |
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サプライヤーのCO2対策などによる原材料コスト増 | 中期~長期 |
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評判 | 顧客評判の変化 | 気候変動への取り組み体制の整備や対応製品の展開・強化の遅れによる顧客評価の低下と売上減少 | 中期~長期 |
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機会
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分類 | 主な機会 | 時間軸 | 対応策 |
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資源の効率 | 水の循環利用による給排水コスト削減 | 中期~長期 |
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インターナルカーボンプライシングの導入などによる効果的な新規設備投資 | 中期 |
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エネルギー源 | エネルギー調達面におけるコスト削減の推進 | 中期~長期 |
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排出枠内にCO2排出量を収めることによる排出権取引の収益化 | 中期~長期 |
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脱炭素に向けた代替エネルギーの導入 | 長期 |
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サプライヤーの技術革新により、カーボンニュートラルの実現に寄与するエネルギー源や原料を用いて製造した原材料の調達機会の増加 | 中期~長期 |
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製品・サービス | さらなるデジタル化・EVの普及などに伴うエレクトロニクス関連製品の需要増加 | 中期~長期 |
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循環型社会の実現に資する製品や取り組みへのニーズ拡大 | 中期~長期 |
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再生可能エネルギーの普及・拡大に伴うビジネス機会の増加 | 中期~長期 |
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省エネルギー製品の販売機会の増加 | 中期~長期 |
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無溶剤製品の販売機会の拡大 | 中期~長期 |
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従業員の環境意識向上による新たなビジネス機会の獲得 | 中期~長期 |
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市場 | 脱炭素社会、循環型社会に向けた取り組みの充実によるステークホルダーからの支持獲得 | 中期~長期 |
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レジリエンス | サプライヤー見直しによるサプライチェーンの安定化 | 中期~長期 |
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+4℃の世界
物理的リスク
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分類 | 主なリスク | 時間軸 | 対応策 | |
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急性 | 自然災害の激甚化 | 豪雨などでのサプライチェーンの寸断や工場の操業停止による製品供給遅延と売り上げの減少 | 中期~長期 |
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修繕費や災害・損害保険費などの増加 | 中期~長期 |
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慢性 | 気温の上昇 | 夏場の空調エネルギーコストの増加 | 中期~長期 |
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用水確保の不安定化 | 地下水の減少による工業用水不足 | 中期~長期 |
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気候変動に伴うリスク・機会の財務的影響
移行リスクによる財務的影響
- カーボンプライシングによる費用の増加
CO2排出量について2030年までに2013年度比で50%以上の削減、2050年に実質ゼロを目指しています。炭素税が導入された場合、2030年に目標を達成した際の炭素税負担は約20億円と推定しています。これは、削減に取り組まない場合と比較し、約11億円の負担減となります。 - CO2排出量削減に向けた設備投資
自家消費型太陽光発電設備やガスタービンコージェネレーションシステムの導入など、長期ビジョン「LSV 2030」の期間中に国内のCO2削減投資として累計約147億円の投資を計画しています。 - 原材料調達環境の変化
当社製品の一部は、化石燃料やパルプ由来の原材料を使用しております。そのため、原材料調達環境の変化による当社事業への長期的リスクは大きいと認識しています。引き続き影響度の分析に取り組むとともに、原材料の転換や新技術を含めた対応策を検討していきます。
物理的リスクによる財務的影響
- 豪雨・水害
原材料の複数購買と各拠点における適正在庫の維持、BCPによるバックアップ体制の構築を図ることで、影響の最小化と製品の安定供給に努めていきます。 - 干ばつ
各拠点における工業用水系統の複数化と工業用水使用量の削減に継続して取り組むことで、影響の最小化に努めていきます。
機会による財務的影響
- 各種環境配慮製品需要の増加
企業の温暖化対策推進、また環境に配慮した持続可能な暮らしへの消費者意識の変化により、当社環境配慮製品の需要増加が見込まれます。影響額は算定中です。 - 省エネルギー対応製品需要の増加
省エネルギーや防災などへのニーズの高まりや、新興国のさらなる工業化・都市化の進展により、当社省エネルギー対応製品の需要増加が見込まれます。 影響額は算定中です。
シナリオの分析の結果
シナリオ分析の結果、2030年および2050年時点において、今回想定したいずれのシナリオにおいても、原材料コスト増による影響や、長期ビジョン「LSV 2030」の取り組みに関連した省エネルギー対応製品や各種環境配慮製品の需要拡大など、当社事業への一定の影響を確認しました。この結果を受け、リスク対応および機会獲得のための積極的な取り組みが必要であることを再確認しました。グループ全社一丸となって対応を進めるとともに、CO2排出量を2030年までに2013年度比で50%以上削減、2050年には実質ゼロを目指して、積極的な取り組みを続けていきます。
リンテックグループの取り組み
リスク管理
リンテックグループではリスク管理体制強化のため、各本部長と社長直轄組織である各室の室長で構成される「全社リスク管理委員会」を2018年4月に設置し、定期的に委員会を開催しています。
2021年4月にサステナビリティ活動の推進体制が刷新・強化され、同委員会の目的を「事業におけるリスクと機会の把握、対応方針策定、職制への落とし込みおよび検証」として、改めて明確にしました。同委員会では、主に各委員の課題認識と管理職などを対象に毎年実施しているリスク洗い出しの結果に基づいて、自然災害を含む各リスクの評価・分析を行っています。その結果は四半期ごとにサステナビリティ委員会で報告され、対応などについての指示を受けています。
また、気候関連リスクに係る情報は「環境委員会」が収集して識別・評価を行い、その結果を「サステナビリティ委員会」に報告しています。同委員会では対応の必要性を検討後、適宜、下部委員会を通じて推進担当役員に業務指示を行っており、指示を受けた推進担当役員はそれぞれの所管部署を通じて対応策を実行します。「環境委員会」はその後の状況の変化を継続的に確認し、当初掲げた指標・目標が達成できているかどうか定期的に把握しています。
今後も各委員会が連携してリスク管理能力の強化に努めるとともに、リスク管理体制の継続的な改善を図ることで、リンテックグループの持続的成長につなげていきます。
関連情報
指標と目標
リンテックグループは、気候変動への対応として温室効果ガス(GHG)排出量の削減が重要であると認識し、研究開発・製造・販売・物流面などにおいてさまざまな施策を推進しています。脱炭素に向けたこれらの取り組みはメーカーとしての使命であると同時に、気候関連の新たな機会獲得につながると考えています。当社グループでは2030年を見据えた長期ビジョン「LSV 2030」において、以下の数値目標を設定しています。
目標
CO2排出量を2030年までに2013年度比で50%以上の削減、2050年までに実質ゼロ
実績
CO2排出量
対象範囲:リンテック(株)の本社、10生産拠点*、研究所、営業拠点、大阪物流センター、東京リンテック加工(株)、湘南リンテック加工(株)(省エネ法定期報告書対象範囲)

- *10⽣産拠点︓吾妻、熊⾕、伊奈、千葉、⿓野、新宮、⼩松島、三島、⼟居、新居浜