サステナビリティ

トップメッセージ

一人ひとりの力がリンテックグループと社会の未来を創る リンテック株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 服部 真

事業活動を通じて環境課題に取り組み、信頼されるリンテックへ

カーボンニュートラルに向けて、現場が一丸となり「前倒し」を実現

当社グループでは、「2030年までにCO2排出量を2013年度比50%以上削減」という目標に対し、前中計「LINTEC SUSTAINABILITY VISION 2030(LSV 2030)-Stage 1」で51%の削減を達成しました。特に、製造時に多くのCO2を排出する抄紙機の乾燥工程の設備改善により大幅な排出量削減ができたことに加え、品質向上やコスト削減にもつながりました。当初の計画では、設備改善を段階的に行う予定でしたが、効果があると分かっている取り組みを前倒しすることは利益の最大化につながりますから「考えられることを臆することなく積極的に進めてほしい」という思いを現場に伝えました。現場では課題や苦労が多かったと思いますが、私の思いを受け必死に考え、動いてくれたからこそ同時に達成できた象徴的な事例だったように思います。また、これらの効果が数字などで目に見えることで、現場を訪問して行うトップパトロールでは、従業員自らの自信にもつながったことを実感しました。この結果を踏まえ、新中計「LSV 2030-Stage 2」では「2030年までにCO2排出量を2013年度比75%以上削減」という目標の見直しを行いました。

CO2排出量削減目標(改定後)

表は横にスライドして御覧いただけます。

2027年3月期
(Stage 2 最終年度)
67%以上削減(2013年度比)
2030年3月期
(Stage 3 最終年度)
75%以上削減(2013年度比)
2050年 カーボンニュートラル達成

お客様、そして地域の皆様へ果たすメーカーとしての使命

ほかにも、剥離剤・粘着剤の無溶剤化の推進やモノマテリアルラベル素材をはじめとした環境配慮製品の積極的な開発や拡販に取り組んでいます。また、私たちの製品は自然豊かな地域で生産されていますので、各地域の環境に配慮することはメーカーの使命であると考えています。「LSV 2030-Stage 2」では、当社を取り巻く環境を踏まえマテリアリティの見直しを行いました。そのマテリアリティの一つである「信頼されるリンテックであり続ける」ことを常に考え、地域の皆様と良好な関係性を築き、今後も職場として選ばれるような企業でありたいと思います。

相手を尊重し、さまざまな人財が
ごく自然に会社に溶け込んでいる姿こそ多様性

企業の行動規範遵守はあるべき姿

国内外での事業展開や原材料を調達するうえで、人権は尊重されなければなりません。早い段階から半導体業界では、お客様から依頼されるサプライヤー調査に人権に関する項目があり、行動規範に関するさまざまなガイドラインに準拠した企業活動がますます求められています。当社グループでも「LSV 2030」策定時に、人権の尊重を重点テーマの一つとして盛り込んでおり、2024年1月にはリンテックグループ人権方針を制定しました。今後も外部の知見や支援を得ながら、対応・改善を進めるよう指示しています。

従業員一人ひとりが最大限の力を発揮するために

私は「さまざまな人財がごく自然に会社に溶け込んでいる姿こそが多様性である」と考えています。
「LSV 2030-Stage 1」では、65歳定年制をはじめとした多くの働き方改革を行いました。この先も年齢や性別など問わず、多様な人財が活躍してくれると信じています。しかし、従業員が負荷を感じるような環境では、企業としての持続性はありませんから、今後も従業員の皆さんが生き生きと働けるよう環境整備を積極的に行っていきます。多様な人財が、お客様をはじめとするステークホルダーとの関係性を絶やすことなく維持し続けることこそ企業としてとても重要に思います。

グローバル企業として
社内・社外と適切かつ丁寧なコミュニケーションを

スピード感を持ちながら真摯に向き合うこと

コーポレートガバナンスはガラス張り、透明であるべきです。M&Aによりリンテックグループの一員となった海外子会社も増えましたが、日本のやり方をそのまま強要するのではなく、相手をリスペクトしコミュニケーションをとりながら、早い段階で方針を擦り合わせるようにしています。
また、スピード感を持った透明性のある情報開示にも重きを置いています。特に株主・投資家の皆様に対しては、偏りのない情報開示を心掛けています。さらに、経営情報や取締役会での決議内容については、今後も可能な限りスピーディーに発信していくべきものと考えています。

  • M&A:Mergers and Acquisitionsの略語。合併と買収。

ビジョン実現に向けたリンテックおよび自分自身のミッション

リンテックのあるべき姿を想像して進む

「LSV 2030-Stage 1」での成果を踏まえ「LSV 2030-Stage 2」を策定しました。全ての施策に優先順位をつけずに取り組むことが望ましいですが、本中計の中でもDXが極めて重要なテーマであると考えています。前中計の2年目では、世界的なインフレ抑制のための金利上昇の影響や、電子・光学関連事業の需要が低迷するなど極めて厳しい結果となりました。しかし、どんなに厳しい事業環境にあっても「稼ぎ出す力」をつけなければサステナブルな企業にはなりえません。少子高齢化、人口減少による労働力不足が懸念される中で、当社としてもDXやロボティクス技術を活用して、マンパワーに依存する仕事のやり方を変えていくなど、世の中の変化に即応していく必要があると考えています。
当社グループは創業以来、お客様からのご愛顧、サプライヤーの支援、グループ全従業員の努力によって、その時代の社会課題を解決してきました。その歩みを止めることなく「サステナブルな社会の実現に貢献していくこと」こそがリンテックのあるべき姿だと考えています。

  • DX:Digital Transformationの略語。ビジネス環境の変化に対応するためにデータとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務の内容やプロセス、組織、企業文化などを変革し、競争優位性を確立すること。

社長は従業員の最強のサポーター

まず私のミッションは、新中計「LSV 2030-Stage 2」を従業員に周知し理解してもらうことだと考えています。過去の従業員満足度調査では、会社の方針が伝わってこないとの声があり、これは私の責任だと痛感しました。そのため、社内報や社内のあらゆる会議、時には現場に赴き従業員の顔を見て、一人ひとりに届くよう言葉を選び、かみ砕いて説明するよう心掛けています。
また会社が持続的に成長していくために、開発に関わる部署以外でも社内の至るところから新製品・新事業創出に向けた提案が持ち上がってくる環境づくりを推進していきます。私自身、営業として多くのお客様の声や市場のニーズを活かしてきましたので、第一線にいる営業自らが手を挙げて新製品の開発に取り組むべきだと考えています。どのような立場にあろうとも、全ての従業員が手を挙げることのできる企業風土であるべきです。もちろん、新製品を生み出すだけでなく、マネジメントやビジネスモデルも同様です。それこそがリンテックの底力、イノベーションになると私は信じています。
多彩な従業員一人ひとりがイノベーションを起こすためにも、最強のサポーターとしてバックアップしていくことが私の大きな責任です。

それぞれの仕事を地球の裏側まで深掘りすれば
自ずと見えてくるものがある

日々の活動の先にイノベーションあり

私自身イノベーションは、魔法の杖でもなければ起こすことができないのではないかと考えたり、これまでやってきたこととは全く別のものを創り出すことと思っていた時期もありました。休日など業務以外の時間を使い、知識が足りない中で未知のものを生み出すことはかなり難しいとも考えていました。そのような思案をしている中で、イノベーションとは既存技術や活動の先にあるという経済学者のシュンペーターが提唱するイノベーション理論に触れ、現業を掘り下げることが新たな価値の創出につながる可能性を持っていると感じました。

一人ひとりが自らの仕事を突き詰めることでサステナブルな企業へ

徹底的に極める、そのプロセスの中で仮に方向が1ミリずれてしまったとします。しかし、そこをさらに探求したところに予期しない副産物が現れる。それがイノベーションだと私は考えます。つまり、自身の業務や活動を地球の裏側まで掘り下げていくような気持ちで徹底的に追求することがイノベーションにつながるのです。
当社グループの歴史を振り返ると、四つの基盤技術を駆使し、それをさらに深掘りしていくことで時代の変化に対応してきたといえます。自社の基盤技術を追求していったことでイノベーションに必要なスピード感をもって製品開発をすることができたのです。そういった歴史のある会社だからこそ、現業を掘り下げていくことでサステナブルな企業になれると考えています。

  • 四つの基盤技術:「粘着応用技術」「表面改質技術」「特殊紙・剥離材製造技術」「システム化技術」

グループ全従業員が一丸となるために

相手を思いやり、そして考える

リンテックが誰からも評価され信頼される会社であり続けるためには、グループ全従業員が一丸となる必要があります。そのためには、地域や文化の違いを超えて「相手をリスペクトすること」が重要だと私は考えます。例えば、グループ全体に情報発信する場合、受け取る相手に合わせ、伝え方を変えることが大切です。どのように発信をすれば十分に伝わるのかが難しく、いつも本当に悩みますが、その悩むということ自体が相手へのリスペクトの一つと考えています。営業として世界中を駆け回っていた時、リスペクトの精神を持って必死に相手とコミュニケーションを図る努力をしてきました。その結果、現地の方々と良好な関係を構築できたという経験は、大きな自信となりました。相手をより理解しようとするところに信頼関係、人間関係が生まれます。そのためには、相手へのリスペクトを忘れないことが何より重要なのです。

ステークホルダーの皆様と明るい未来へ突き進む

全てのステークホルダーにとって「良きリンテック」であるために

私は、当社グループの全従業員がすべての原動力であり、会社の力を生み出すエンジンだと考えています。仕事は大変なこともありますが、従業員自身が「リンテックで良かった」と思っていなければ、私たちを支えてくださるほかのステークホルダーの皆様にも「リンテックが良い」と言ってはもらえません。
前中計の業績についてはさまざまな要因もあり厳しい結果となりましたが、そのような経営環境の中でも従業員一人ひとりが各施策に懸命に取り組んでくれました。「LSV 2030-Stage 2」ではこれまでの取り組みが加速し、良い数字に反映されると信じています。会社が成長するためには営業利益額を伸長させ、営業利益率とROEをさらに向上させる必要があります。お客様に対しては必要な場面でしっかりと次世代に向けた提案を行い、サプライヤーの皆様と新陳代謝を高め、リンテックを支えてくれるステークホルダーの皆様とともにサステナブルな企業でありたいと考えています。

  • ROE:Return On Equityの略語。自己資本利益率。

トップメッセージを受けて

トップメッセージに込められた思いや考えは長期ビジョン「LSV 2030」の実現になくてはならないものです。グループ全従業員がこの考えや方針にベクトルを合わせ、個々の力を一つに結集することにより、強力な推進力が生み出されます。
100%の推進力を発揮するためには、グループ全従業員がビジョンや目標「LSV 2030-Stage 2」の施策は「何のためにあるのか」「自分は何をするべきか」をそれぞれの立場でしっかり考え、重要課題や全社・部署の取り組みを「自分事」化して実行していかなければなりません。さらにイノベーションを起こし、それぞれの力を100%以上にするための強い味方は「社長が従業員の最強のサポーターである」ということです。ビジョンの実現を確実なものにするためトップの意志を全従業員に伝えて浸透させるとともに、全従業員に「自ら動く」という意識を持ってもらうことがサステナビリティ推進室の重要な使命です。
また、当社グループを取り巻く外部環境は近年大きく変化しており、その変化は広く、高く、深く、速くなっています。さらにマテリアリティで設定したサステナビリティ課題は未財務の課題として独立したものではなく、経営戦略と有機的に結びつき企業の持続的成長に寄与するということを示す「ストーリー」の重要性も増しています。
これらの変化や要求を的確に捉え、サステナビリティ委員会をはじめとする社内各組織への新たな提案や施策立案により活動を推進すること。そして当社グループの戦略や活動の実績を社内外に適時・適切に開示し、ステークホルダーとの対話などを通じてパフォーマンスを高めていくことが当室のもう一つの使命です。
これからも従業員の最強のサポーターであるトップの意志を伝え、全従業員が自ら考えて動く土壌をつくる。そこで実行すべき新たな考え方や取り組みを推進し、長期ビジョンを実現するという二つの使命を力強く実行していきます。

執行役員
サステナビリティ推進室長
星 優

2024年8月30日