サステナビリティ

トップメッセージ

厳しい事業環境下においても成長できる強靭な企業体質をつくる。長期ビジョンの実現に向けてグループ会社が一丸となって取り組みを加速していきます。 リンテック株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 服部 真

中期経営計画2年目の2022年度を振り返って

当社グループは2030年を見据えた長期ビジョン「LSV 2030」を掲げると同時に、その実現に向けたマイルストーンとして、2023年度を最終年度とする中期経営計画「LSV 2030 - Stage1」を2021年4月にスタートさせました。初年度においては業績が好調に推移し、最終年度の数値目標を前倒しで達成したことから、経営目標を上方修正しました。しかし、2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、世界規模での原燃料価格の高騰やインフレ抑制のための各国の高金利政策が加速するなど、その後は一転して厳しい事業環境となりました。一方、我が国においては、円安影響による物価上昇が続いていることもあり個人消費に伸びを欠くなど、景気回復は極めて緩やかなものとなりました。
特に昨年の秋口以降は、電子・光学関連事業がスマートフォンやパソコン用の需要減少の影響を大きく受け、加えて好調であった米国子会社においても金利上昇に伴う個人消費減速の影響を受けました。
このような状況の下、2022年度の連結業績につきましては、売上高は北米での買収効果や円安影響も加わり過去最高を記録しましたが、営業利益、経常利益は前年度に比べて大幅な減少となりました。いかなる事業環境にあっても成長し、利益を稼ぎ出すことができる強靭な企業体質をつくることの重要性を改めて認識し、プラス思考で長期ビジョンの実現に向けて気持ちを新たにして前進していきます。

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2024年3月期連結業績予想(前期比)

表は横にスライドして御覧いただけます。

売上高 2,900億円(1.9%増)
営業利益 135億円(2.1%減)
経常利益 135億円(13.5%減)
親会社株主に帰属する当期純利益 95億円(17.5%減)

業務プロセス改革のために一気呵成にDXを推進

重点テーマの一つ「イノベーションによる企業体質の強靭化」を推進するための施策としてDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進していきます。まず社内にDXの基本知識を普及させながら、種々のツールを導入して最大活用していく必要があります。その中で、全社としてスピード感を持って業務プロセスの改革に取り組んでいきます。一気呵成に進めていくことが重要であり、2022年度にデジタル化推進プロジェクト「LDX2030」を発足させました。
まずDXの知識を積み重ねられるような教育を行いながら、専門知識を持った社員がリーダーとなって全社に展開していかなければなりません。DXの中にはAIの活用もあります。研究開発本部では、AIに精通した人材育成を進め、AIを駆使してこれまでの膨大なデータから効率よく結論を導き出し、開発スピードを高める取り組みを始めました。新たな付加価値の創造という観点からも極めて有効だと考えています。
かつてのように右肩上がりで事業が成長する中では、それに見合うヒューマンリソースをいかに確保し配分・投入していくかという点に主眼があったわけですが、厳しい事業環境下では人材のスキルを最大限発揮してもらえるような環境づくりをすることが成長の鍵になります。デジタル化やロボティクスで自動化できるところは積極的に技術を取り込み、社員はシステムやロボットではできない領域で力を発揮してもらう。企業体質の強靭化を加速するために、こうしたDXの推進を速やかに、着実に進めていきます。

  • DX:Digital Transformationの略語。ビジネス環境の変化に対応するためにデータとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務の内容やプロセス、組織、企業文化などを変革し、競争優位性を確立すること。

カーボンニュートラル、循環型社会実現への取り組み

気候変動が当社グループの事業活動にさまざまな影響を及ぼすことを認識し、重要な経営課題の一つと捉えています。2030年までにCO2排出量を2013年度比50%以上削減という目標の実現に向けて、生産本部を中心に無溶剤型の生産設備や排熱回収ボイラ、コージェネレーション設備、太陽光発電設備などの導入を可能な限り前倒しで進めています。2022年度からはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った情報開示の充実にも積極的に取り組んでいます。
また、循環型社会を見据えた環境配慮製品の開発・製造販売にも力を入れています。例えば、脱プラスチックの流れの中で、当社の特殊紙技術を使った耐水印刷用紙「プラレスペーパーCoC」をプラスチック代替材料として提案して採用いただいたり、粘着フィルムの構成材料を再生プラスチックフィルムやバイオマス粘着剤に置き換えるなど、あらゆる取り組みを進めています。
特にラベルが貼られる対象物のリサイクル、リユース促進という観点からは、プラスチック成型品に貼ったままで分別せずにリサイクルできるラベル素材、容器などから分別する際にきれいに剥がせるラベル素材、以上の2方向の考え方に基づき、当社では20年以上前からさまざまな製品を開発・提案してきました。
昨年度には、PET製容器と同素材のポリエステル系粘着剤を新たに開発し、フィルムと合わせて“モノマテリアル”ラベル素材として発売しました。PETボトルなどのリサイクル促進に寄与するアイテムとして注目されています。各種環境配慮製品の開発・提案に加え、ラベルや剥離紙の循環システム構築への取り組みも本格的にスタートさせています。
関連企業が中心となってこの6月に一般社団法人として設立された「ラベル循環協会(J-ECOL)」に参画し、使用済み剥離紙の再資源化と普及促進、リサイクル技術確立の支援、リサイクルの現状の可視化と情報発信に取り組んでいきます。一企業でできることには限界がありますので、社会的インフラを構築していくために業界挙げての取り組みが必要になってくると考えています。

リンテックグループのCO2排出量の削減目標

表は横にスライドして御覧いただけます。

中期目標
(2013年度比)
2030年までにCO2排出量を50%以上削減
長期目標 2050年までに“カーボンニュートラル”を実現

ステークホルダーとしての従業員を重視する経営

当社グループにとって最大の財産は全従業員です。長期ビジョンに掲げる重点テーマの下、労働安全衛生やダイバーシティ、働き方改革の推進などについて、それぞれKPIを設定し、具体的な施策を進めています。65歳定年退職制、希望者に対する65歳以降70歳までの再雇用制の採用など新たに雇用規程も改定しました。
社内に常にお願いしていることは、風通しの良い組織をつくることです。家族的な雰囲気を重んじる社風は、私が入社した頃から変わっていません。社員も増え組織が大きくなっていますが、人と人との交流の中で、お互いの気持ちを素直にぶつけ合える、語り合える雰囲気を大事にしていきます。この3年半のコロナ禍ではテレワーク、在宅勤務を導入しましたが、組織内でのコミュニケーションが十分ではなかったと感じています。5月から新型コロナウイルス感染症が5類に移行されたことでオフィスに人が集まるようになり、隣同士で直接語り合える、そういう日常が戻ってきたことを嬉しく思うという声も聞こえてきます。どんなにシステムが発達しても人と人の直接的なコミュニケーションの全てを置き換えられるものではないと感じています。ただテレワーク、在宅勤務の良さもありますので、以前のように100%出社の体制に戻す必要はないと考えています。働き方改革の視点からも、出社とテレワークのハイブリッド型で、良いところをうまくコラボレーションさせて、マネジメントしていければ良いと思っています。
また従業員満足度調査を実施し、結果の分析を進めています。会社は社員が主役ですので、一人ひとりの考え方を尊重しながら、次の施策につなげていきます。さらに、DXの推進により人ならではの能力を発揮できる環境を充実させていきます。職種や階層に関係なくイノベーティブに行動する人財を育成していきたいと思います。

サステナビリティ推進の進捗状況

長期ビジョンの実現に向けてサステナビリティ推進体制も継続して強化しています。2021年4月にスタートした、経営層で構成されているサステナビリティ委員会には社外取締役全員にメンバーとして参加していただいています。現在の立ち位置や進んでいる方向性が妥当かどうか、それぞれの知見や経験を踏まえた客観的な視点による忌憚のない意見や提言を取り入れ、ガバナンスの実効性を高めたサステナビリティ推進につなげられていると考えています。さらにサステナビリティ推進室の人的補強も図り、実務の面でも体制を強化しています。
また、当社グループを取り巻くさまざまな環境も変化していることから、課題をより明確にするためマテリアリティや指標の見直し、リスク分析などを行い、委員会活動などを通じ着実にPDCAを回すことによりサステナビリティ経営を推進していきます。

「LSV 2030」の実現に向けて

今年度も原燃料価格の高止まりや半導体・電子部品関連製品の需要の低迷などにより、当社グループの業績は大きな影響を受けることが予想されます。厳しい事業環境の中にあっても、全社一丸となって取り組む突破力はしっかりと培われていると私は信じています。長期ビジョンに込めた想いや狙い、進め方に対する考え方を社内に落とし込めば、社員一人ひとりが着実に進めてくれるという手応えを感じています。長期ビジョンに掲げる各重点テーマ、そしてそこに込められた想いを社内に浸透させ、定着させていくためにも、さまざまな機会や媒体を使って社員に理解を深めてもらう努力をこれからも続けていきます。
長期ビジョンの実現に向けた取り組みはどれ一つ緩められるものはありません。むしろ前倒しで進め、年度の途中であっても時には軌道修正しつつ新たな施策に着手するよう、さまざまな場面で指示しています。さらに長期ビジョンの重点テーマも2030年まで手を加えないということではなく、事業環境の変化に合わせ変えていくことも“走りながら”考えていきます。
当社グループは、粘着応用技術、表面改質技術、特殊紙・剥離材製造技術、システム化技術という四つの基盤技術を進化・融合させていくことで、ラベル素材やカラー封筒用紙といった身近な製品から、建物・自動車関連、エレクトロニクス関連といった用途まで幅広い製品を提供しています。それらを通じて、暮らしの中で心地よさ、快適さ、便利さといった価値を提供させていただいていると自負しております。これからもモノづくりを通じて、新製品の提案や提供をさせていただきながら持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えていますので、引き続き全てのステークホルダーの皆様の強力なご支援をお願いいたします。