CSR

トップメッセージ

2030年、私たちがあるべき姿とはー  多様で柔軟な発想を前に進む力に換えて、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。 リンテック株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 服部 真

社是「至誠と創造」の大切さを改めて実感

昨年4月にリンテックの社長に就任してから1年以上が経過しましたが、その間、新型コロナウイルスの感染症拡大という想定外の事態によって、私たちの生活様式や事業環境は目まぐるしい変化に直面することとなりました。この環境の変化に対して当社グループは一つ一つ丁寧に、かつ迅速に対応しつつ諸施策を推進してきました。
当社グループの従業員はコロナ禍で多くの制約がある中、社会や市場に対する責任を果たすために「誠意」を持って製品の安定供給に全力を尽くしてくれました。また、刻一刻と変化する市場ニーズや社会からの要請にきめ細かく応えるモノづくりをするには「創造性」も必要不可欠な要素だったと思います。この未曽有の状況の中にあって、当社の社是である「至誠と創造」の精神がしっかりと受け継がれていることを、そしてその大切さを改めて実感することができました。
今回の新型コロナウイルスの感染症拡大については、ワクチン接種の進展などにより一日も早く収束に向かうことを祈るばかりですが、今後もこうしたパンデミック以外にも、世界的な異常気象の発生頻度の高まりなどによって社会の急激な変化が起き得る可能性もあると考えておかなければなりません。私たちは今までに経験したことのないさまざまな事態を想定し、どのような状況に陥っても柔軟に対応できる力をあらかじめ身につけておくことが重要であると強く感じています。

長期ビジョンのスタートに向けて足掛かりを築く

2020年度は、2030年を見据えた長期ビジョンの策定およびスタートに向けた準備期間として単年度計画の下、取り組みを進めてきました。業績面においては、半導体・電子部品関連製品が好調に推移したものの、全体的には特に期前半においてコロナ禍の影響を受け需要が落ち込みました。しかし、第3四半期以降は一部の市場で需要が回復基調に入り、そのビジネスチャンスを逃さずに業績を底上げすることができました。また、脱プラスチック関連の製品など、今後の市場を見据えた新製品も数多く上市することができたと考えています。厳しい事業環境の中にありながらも、2021年度からスタートする長期ビジョンへの足掛かりを築いた一年と言えます。

事業活動を通じてサステナブルな社会の実現に貢献

長期ビジョンの策定に当たっては、2030年に社会はどのように変化しているのか、あるいは山積する社会的課題を解決するために当社グループはどうあるべきかなどについて、社内で議論を重ねてきました。さらに、企業としての在り方を見詰め直した結果として「LINTEC SUSTAINABILITY VISION 2030」 (略称:LSV2030)の実現に向けて走り出しました。そしてバックキャスティング*1の考え方に基づき、3か年ごとの中期経営計画をマイルストーンとして順次策定・推進していく方針とし、まずは2021年4月から2024年3月までの3年間を対象とした新たな中期経営計画を同時にスタートさせました。
長期ビジョンの基本方針は「イノベーションによる企業体質の強靭化と持続的成長に向けた新製品・新事業の創出を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献する」とし、三つの重点テーマを掲げています。
一つ目の重点テーマは「社会的課題の解決」です。喫緊の課題として世界で対策が求められている気候変動を含めた環境課題(Environment)、取引先や地域の方々、従業員およびその家族も含めた全ての人々の暮らしに関わる社会影響(Social)、そして企業グループとして最適な意思決定を迅速に行い、かつ経営の透明性を高める企業統治(Governance)などが含まれています。
特に環境課題の解決については、脱炭素社会の実現に貢献すべく各生産拠点における太陽光発電設備やコージェネレーションシステム*2の導入、再生可能エネルギーによるグリーン電力活用などにより、当社グループとしてCO2の排出量を2030年までに2013年度比で50%以上削減し、2050年には実質ゼロを目指していきます。また、バリューチェーン全体での脱炭素化にも積極的に取り組んでいく考えです。
さらに、循環型社会の実現に向けてリサイクル可能製品やバイオマス製品、生分解性製品の拡充、剥離紙や剥離フィルムのリサイクルシステムの構築などに取り組んでいきます。原材料の転換には大きなハードルが幾重にもあると思いますが、素材の機能を最大限に引き出すことを生業にしてきた当社グループであれば実現できるものと確信しています。同様に粘着剤や剥離剤の塗工工程において有機溶剤を使用しない「無溶剤化」も引き続き進めていきます。
二つ目の重点テーマは「イノベーションによる企業体質の強靭化」です。社会的課題を継続的に解決していくためには、まずは自社が外部環境に大きく左右されない強靭な企業体質を有していることが不可欠です。その一つとしてDX*3による設計・開発・製造・物流・業務プロセスの変革が挙げられます。さまざまな無理や無駄を、感覚ではなくシステムできちんと管理して改善を図っていくことは、コストの削減だけでなく、従業員負担の削減や業務の属人化を抑えた持続可能なオペレーションの確立、さらには環境負荷の削減にもつながるものと考えています。
三つ目の重点テーマは「持続的成長に向けた新製品・新事業の創出」です。今まで培ってきた開発・製造技術にさらに磨きをかけるとともに、従来技術の枠に捉われない新規分野の技術を取り込み、自社の独自技術と融合していくことで、新たな市場価値を生み出す企業グループとしてお客様の“期待を超える”製品とサービスを提供していきます。社会環境の変化に伴って、市場が求めるモノも加速度的に変わっていきます。その変化を敏感に察知し、必要とされるモノをいち早く開発して提案・提供していくことが期待を超えるという言葉の意味するところです。

  • *1バックキャスティング:未来を考える上で、目標となるような状態・状況を想定し、その想定から現在に立ち返って、今何をすべきかを考える手法。
  • *2コージェネレーションシステム:ガスなどの一つのエネルギー源から電力と熱といった二つのエネルギーを効率良く創出するシステム。
  • *3DX:Digital Transformationの略語。ビジネス環境の変化に対応するためにデータとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務の内容やプロセス、組織、企業文化などを変革し、競争優位性を確立すること。

長期ビジョンを見据えた意識改革、行動変革を

長期ビジョンからバックキャスティングした最初のステージとなる3か年の中期経営計画「LSV 2030- Stage1」の初年度は、長期ビジョンの考え方を社内に浸透させ、従業員の意識改革を図っていく大事な時期だと考えています。私たちは2030年というおよそ10年後の自分たちのあるべき姿をしっかりと描いていかなければなりません。その未来像からバックキャスティングし、何に対して今どう取り組むべきか。常に発想を広げることで、イノベーションが生まれるのではないかと考えています。マイルストーンとなる3年ごとの中期経営計画の具体的な目標はもちろん着実に達成していかなければなりませんが、そこばかりに目を向けていては、従来のやり方と変わりがないと言えます。
今回のコロナ禍のような想定外の事態がたとえ今後起きたとしても、その時々で対応しながら大きな目標に対してぶれることなく進んでいくということが何よりも大切です。社是に掲げる「至誠と創造」の精神、そして将来のあるべき姿として掲げる長期ビジョンを念頭に置きながら、従業員一人ひとりが自分なりに考えて行動してほしいと思っています。

  • バックキャスティング:未来を考える上で、目標となるような状態・状況を想定し、その想定から現在に立ち返って、今何をすべきかを考える手法。

多様な考え方を生かすダイバーシティ経営の推進

サステナブルな社会の実現に貢献していくためには、人材の育成が非常に重要となります。当社グループの人づくりにおけるこれからのキーワードは、言うまでもなく「ダイバーシティ」です。当社の事業領域は年々グローバル化が進み、今後、世界で活躍できる能力や幅広い視点を持った人材がますます求められてきます。国籍や性別といった属性に捉われることなく、多様な人材が必要です。また、多様な人材を採用することはもとより、その多様性を違和感なく受け入れることができる環境づくりが不可欠です。
このダイバーシティの考え方に基づく諸施策の推進は、グローバル経営の観点からも欠かせない土台になってくると言えます。長期ビジョンの達成を実現する担い手として、2030年への発想と行動ができるリーダーシップを発揮する人材を育成していきます。

  • ダイバーシティ:立場や価値観などの異なる人同士が集団の中に存在すること。多様な個性を尊重することで、適材適所での各能力の発揮やさまざまな視点からの問題解決、独創的なアイデアの創出などを促進する。

SDGsへの取り組み強化を引き続き経営の根幹に

当社グループではSDGsを企業経営の根幹に据え、本業を通じて社会的課題の解決に貢献していこうと取り組んでいます。2018年に「SDGs委員会」を立ち上げた際には、私自身が推進担当役員を務めました。今、私たちが長期ビジョンの重点テーマの中に掲げる脱炭素社会や循環型社会の実現などは、すなわちSDGsそのものでもあり、その実現への取り組みは、日々の事業活動を通じてごく当たり前に実践していくべきテーマです。
今年4月に、当社は社長直轄のCSR推進室を「サステナビリティ推進室」に改称するとともに、経営トップや関係役員、社外取締役などが参画する「サステナビリティ委員会」を新設しました。そしてその傘下に新たに位置づけられた「SDGs委員会」は全社横断的な組織として多様な人材が集結しています。そうした意味では、今後当社が目指していくダイバーシティの一つの形にもなるのではと考えています。実際、従来の組織の枠組みを超えた活発な議論を通じて、新製品や新事業につながり得るアイデアが数多く生まれつつあります。これからの製品づくりは、専門の部門だけに任せるのではなく、全従業員で考えていくことが重要です。SDGsを本業と違うプラスアルファの活動と位置づけるのではなく、「自分たちの業務そのものなのだ」と従業員が実感してくれる土壌をつくっていきたいと思っています。
このほか、当社グループでは幅広いESGテーマの中から企業が注力すべきマテリアリティ(重点課題)を特定しています。このマテリアリティについても、バリューチェーン全体の中で事業活動に対する影響を整理し、社会の変化やSDGsの視点を盛り込みながら見直しを図っています。

全従業員の力を一つにしてあるべき姿の実現を目指す

この1年数か月を振り返り、強く感じたことがもう一つあります。それは、当社グループに対する投資家からの期待の高さです。国内外の機関投資家の方々とのミーティングを通して、事業上あるいは経営上の改善点などについていろいろとご意見を頂きました。私自身、考えさせられることも多く、率直に意見を交わすことで建設的な対話ができたと思います。頂いたご意見は必要に応じて経営に取り込み、皆様のご期待にしっかりとお応えできるように改善策を講じていきます。
今後、世界は一層不確実な時代へと突入し、想定外の事態がむしろ常態的に起きる可能性さえあります。今、私たちが直面している新型コロナウイルスの感染症拡大は、まさにそれを象徴するものだと感じています。だからこそ、これまでにない迅速な対応が求められ、企業としての社会に対する姿勢というものが明確に評価される時代になりつつあると言えます。当社グループはこの大きな変化を正面から受け止め、多岐にわたる社会的課題の解決に貢献し、持続的な成長を果たしていこうという思いから長期ビジョンを掲げました。全従業員の力を一つにし、私たちが思い描く当社グループのあるべき姿を確実に実現するために前へと進んでいきます。