スマートフォンやノートパソコン、デジタルカメラなどの電子機器には、実にさまざまな電子部品が内蔵されている。どんな電子機器も、幾つもの電子部品が複合的に機能することで、初めて製品として成り立っている。そんな電子部品の一つに、積層セラミックコンデンサがある。積層セラミックコンデンサは、機器内で流れる電流の量を調整するために使われている電子部品で、1台のスマートフォンに400から500個、薄型テレビには約2,000個も内蔵されている。そしてこのコンデンサの一つ一つの大きさは、なんとシャープペンシルの芯の太さ、0.5㎜以下の極小サイズ。そんな積層セラミックコンデンサの製造工程で欠かせないのが、市川が開発に携わっているフィルムだ。このフィルムは、シールやラベルの台紙、すなわち剥がしてしまう剥離紙・剥離フィルムの技術をベースにしたもの。コンデンサ内の薄膜セラミックス層は、このフィルムにペースト状のセラミックスを塗布し、加熱乾燥後に剥がすことでつくられる。
- 市川 慎也(いちかわ しんや)
- 金沢大学大学院 自然科学研究科 物質工学専攻。2007年、リンテック入社。剥離材料研究室にて剥離フィルムの研究開発に携わった後、積層セラミックコンデンサの製造に欠かせない剥離フィルムの研究開発に取り組む。何よりも顧客満足を優先する、穏やかながら、誰よりも熱い思いを胸に秘める研究所のスムーズマン。