研究所内で勤務する知的財産部員はリエゾン(研究員から発明を発掘して弁理士に引き渡す仲立ちの仕事を行うスタッフ)という形で研究所に常勤している。亀島は今、素材設計研究室の担当。リンテックの中でも、中・長期的な視点で次世代技術の基盤をつくる研究室なだけに、さまざまな発明が生まれる部署だ。亀島は研究員が見逃している小さな発明まで光を当てられるよう先行調査をすることや開発をサポートすること、出願計画を立てることなど日々率先して業務に励んでいる。研究所内でのグループミーティングに参加するときも、ただ研究員からの相談を聞くだけではなく、狭い範囲で考えがちな研究員の視野が広がるよう、常に「こんな分野の開発はないか」と提案するよう心掛けているという。
広い視野を持ちつつ業務に携わっている亀島。苦労している点は?との問いに亀島はこう答えた。「出産・育児休暇中の空白の時間を埋めるのに苦労しています。この間に、社内の技術がすごく進歩していましたから・・・」。しかし、彼女は今も高分子学会に所属し、研究員と同じ目線で最先端技術の情報収集に努めている。また、実作業の文章読解の点でも大変さがあるという。「大学の研究では、論文の内容が分かればよかったんですが、特許資料は一字一句注意して読まないといけないので大変ですね」。亀島は着実に結果を出し、多忙な中にも充実感を見いだしているようだ。
職場復帰後には、大学時代の研究が引き続き生かせる基礎データの分析の業務を希望していたが、知的財産部に配属となった亀島。しかし彼女は今、この仕事に出会えてよかったと話す。「この部署ではいろんな人と話ができるのが楽しい。営業担当者や初対面の研究員と話をする機会が多くなりましたし。リンテックの技術や製品についても、より詳しく知ることができるので以前より好奇心が湧くようになりました」。
今後この仕事に求められるものとは?との質問に亀島はこう答える。「以前は研究員から依頼されて動くスタンスの仕事が多かったですが、今は逆にリエゾンが開発分野を提案している部分もあります。そういった『提案型の知的財産管理』をさらに増やせたらいいですね。そうすれば、もっともっと新しいものを世の中に届けられますから」。亀島が担当した材料が身近な製品として私たちの前に現れる日も近いかもしれない。