森が籍を置くプロセス開発室。その研究内容は、一般的には想像がつきにくいかもしれない。紙やフィルムに塗る塗工液の原材料を「混ぜ合わせる」、その塗工液を「塗る」、「乾かす」、あるいはベースの紙やフィルムをロールから「繰り出す」、再びロールに「巻き取る」などといった、それぞれの単位操作技術の研究開発がその仕事だ。シールやラベル、あるいは特殊な機能性フィルムなど、リンテック社内のさまざまな製品開発部署における開発過程で、トラブルが発生したときに必ず声が掛かる、研究所の「相談窓口」のような役割を担う。それぞれの工程に関わる技術のスペシャリストが問題を見極め、解決方法を提案していく。そのかいあって、各種製品の品質の確立と量産化が実現するのだ。
プロセス開発室で森は、乾燥工程の研究を行っている。紙やフィルムに塗った粘着剤や表面コート剤などの塗工液を、熱風で乾かし、定着させる乾燥工程のスピードは、最終的な製品の生産効率を大きく左右する。しかし、熱風の温度や風速を上げれば、それだけ塗工層表面の品質を低下させる危険も大きくなる。「一言で乾燥工程の研究と言っても、各製品の材料設計や機械設備についての知識もないと理解できません。プロセス開発室は、研究所内でも非常に幅広い知識を求められる部署の一つだと思います」。