なぜ透明なフィルムが、日射の熱エネルギーを遮ることができるのか。その秘密はフィルムの表面に、近赤外線を吸収するコーティング剤が薄く塗られていることにある。松下はさまざまな機能を持ったコーティング剤を混ぜ合わせて開発を進めていく。
「元々コーティングは、フィルム表面に傷がつきにくくするために行われていましたが、その機能にプラスして近赤外線吸収剤なども混ぜ合わせていきます。混ざりにくいうえに、高い透明度も同時に維持しなくてはいけない。さらに、機能を高めすぎると窓ガラスが熱を吸収しすぎて、膨張によりガラスが割れる心配があります。そのため、物質の混ぜ具合の調節や、機能をきちんと発揮するための組み替えなど、アプローチが非常に難しいんです」。
新製品の開発は設計で半年、実際に製品化するまでさらに半年かかることもある。ウインドーフィルムの開発にはそのほかにも数々の課題があるからだ。ウインドーフィルムは非常に薄い。薄いとコーティング剤を塗った後にフィルムが収縮を起こすなど、新たな問題が出てくることもある。また、薄いうえに製品幅が最大で約1.5mもあるので、ロールとして巻き取ったときにたるみやしわになりやすい。そのためウインドーフィルムには、最適な生産技術・設備の開発も求められるのだ。
松下は自分で配合したコーティング剤や粘着剤を実際のフィルムに塗り、目標となる数値が出るかどうかの分析を重ねる。時には、建物の東面か南面か、どちらに貼られるのかまで考慮して開発に挑む。製品の改良や新製品開発のためにフィルムメーカーとの話し合いを行い、透明感やコーティング加工のしやすさについて意見交換を重ねることもある。松下はさまざまな視点から“機能の調和”を考え抜いていく。
そんな松下に、課題解決のキッカケを聞いてみた。「ほかの部署の仲間とのディスカッションから解決のヒントが生まれることが多いですね。こういう問題があるけど、過去に起きたことはないか?どう改善したか?と話し合ったり。そこで得た情報を基に、自分なりのアレンジを加えて開発につなげています」。リンテックはウインドーフィルムだけでなく、液晶用の光学機能性フィルムなどにもコーティング技術を応用しているため、研究員同士の開発テーマが共通している部分がある。工場、営業、研究と連携して「こういうものをつくっていきたい」「こうすれば消費電力はもっと落ちる」とよく話し合うそうだ。
たった1枚のフィルムに多彩な機能性を付与するリンテックのさまざまな技術が、相互につながり合うことで、さらに優れたウインドーフィルムが生まれるのだろう。