建物の窓ガラスに貼るだけ!“ウインドーフィルム”で省エネへ。

建物の窓ガラスに貼るだけ!“ウインドーフィルム”で省エネへ。

PROFILE

松下 尚(まつした たかし)
1993年、リンテック入社。東京理科大学理学部2部化学科卒。製品の試験・分析を担当後、印刷材料の開発に携わる。その後ウインドーフィルムの開発に従事し、現在は粘着材料研究室でその開発をさらに進めている。いつも室内をいかに快適にするかを考えている、研究所の省エネマスター。

窓ガラスに貼るだけで太陽の熱エネルギーをカット。夏場の冷房効率を高め、オフィスの省エネルギー化を促進する日射調整フィルム。地球温暖化への懸念から注目を集めるこのフィルムの開発にリンテックは長年携わり、高い評価を得てきた。今回はこのウインドーフィルムの開発を担当する松下尚にその製品の特徴と開発の課題について尋ねた。

Chapter 01

窓に貼るだけで冷房効率を向上させる日射調整フィルムを開発

この製品は、消費電力削減に貢献できる。
ウインドーフィルムは暑いオフィスの救世主

ウインドーフィルム。それは、窓ガラス全面に貼るだけでさまざまな効果を発揮する粘着フィルムである。地震などによるガラス破損時の破片の飛散・落下防止効果。家具などの退色を防ぐ紫外線カット効果。プライバシーの保護や多彩な装飾効果。そして今、最も注目されているのが“日射調整効果”だ。

粘着材料研究室に籍を置く松下は、ウインドーフィルム全般の開発を担当する研究員。最近は日射調整フィルムの開発に注力している。「オフィスの電力使用量で一番多いのは空調関係と言われています。その電力の削減に“貼るだけ”で貢献できるのがリンテックのウインドーフィルムです。高透明タイプも取りそろえているので、遮光のためのブラインドやカーテンのように室内の明るさが損なわれることがなく、昼間の蛍光灯の使用本数を減らすこともできる。そういった意味でもこの製品は、消費電力削減に貢献できるんです。特に全面ガラス張りの建築物が増えている昨今、欠かせない製品だと思います」。

室内の明るさを保ち、熱エネルギーをカット

ウインドーフィルムの日射調整効果は、どれほどのものか。松下は語る。「何もフィルムを貼っていないガラスだと、日射透過率は約86%。その中には明るさの源となる可視光線のほかに、目に見えない近赤外線や紫外線が含まれています。ところが、例えば窓に『ヒートカットHCN-70B』を貼ると、トータルの日射透過率を約37%まで減らせます。普通、そこまで熱エネルギーをカットしようとすると、明るい光を室内に取り込むことができなくなるんですが、この製品は可視光線透過率が約72%と高い水準をキープ。熱エネルギーが高い近赤外線域の光線だけをできるだけ遮り、室内の明るさを保つ可視光線を多く取り込むことができるんです」。

「ヒートカット HCN-70B」を貼った窓ガラスの省エネ効果

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Chapter 02

開発の壁を崩すのは、仲間とのディスカッション

仲間とのディスカッションから課題解決のヒントが生まれる。
待ち受ける山積みの課題

なぜ透明なフィルムが、日射の熱エネルギーを遮ることができるのか。その秘密はフィルムの表面に、近赤外線を吸収するコーティング剤が薄く塗られていることにある。松下はさまざまな機能を持ったコーティング剤を混ぜ合わせて開発を進めていく。

「元々コーティングは、フィルム表面に傷がつきにくくするために行われていましたが、その機能にプラスして近赤外線吸収剤なども混ぜ合わせていきます。混ざりにくいうえに、高い透明度も同時に維持しなくてはいけない。さらに、機能を高めすぎると窓ガラスが熱を吸収しすぎて、膨張によりガラスが割れる心配があります。そのため、物質の混ぜ具合の調節や、機能をきちんと発揮するための組み替えなど、アプローチが非常に難しいんです」。

新製品の開発は設計で半年、実際に製品化するまでさらに半年かかることもある。ウインドーフィルムの開発にはそのほかにも数々の課題があるからだ。ウインドーフィルムは非常に薄い。薄いとコーティング剤を塗った後にフィルムが収縮を起こすなど、新たな問題が出てくることもある。また、薄いうえに製品幅が最大で約1.5mもあるので、ロールとして巻き取ったときにたるみやしわになりやすい。そのためウインドーフィルムには、最適な生産技術・設備の開発も求められるのだ。

ディスカッションで技術をつなぐ

松下は自分で配合したコーティング剤や粘着剤を実際のフィルムに塗り、目標となる数値が出るかどうかの分析を重ねる。時には、建物の東面か南面か、どちらに貼られるのかまで考慮して開発に挑む。製品の改良や新製品開発のためにフィルムメーカーとの話し合いを行い、透明感やコーティング加工のしやすさについて意見交換を重ねることもある。松下はさまざまな視点から“機能の調和”を考え抜いていく。

そんな松下に、課題解決のキッカケを聞いてみた。「ほかの部署の仲間とのディスカッションから解決のヒントが生まれることが多いですね。こういう問題があるけど、過去に起きたことはないか?どう改善したか?と話し合ったり。そこで得た情報を基に、自分なりのアレンジを加えて開発につなげています」。リンテックはウインドーフィルムだけでなく、液晶用の光学機能性フィルムなどにもコーティング技術を応用しているため、研究員同士の開発テーマが共通している部分がある。工場、営業、研究と連携して「こういうものをつくっていきたい」「こうすれば消費電力はもっと落ちる」とよく話し合うそうだ。

たった1枚のフィルムに多彩な機能性を付与するリンテックのさまざまな技術が、相互につながり合うことで、さらに優れたウインドーフィルムが生まれるのだろう。

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Chapter 03

窓を見詰めて、地球と人の未来を守る

ウインドーフィルムのスペシャリストになりたい。
入社後、大学へ

研究所では中堅に当たる松下。リンテックへ入社した当時は、製品の耐久性や粘着力の試験・分析を担当していた。その後、上司の薦めもあり大学に通い、新たな知識を手に研究に励んでいる。「大学で学んだことで特に“調べる力”が身に着いたと思います。通う前には読み解けなかった分析結果を科学的に検証できるようになりました」。松下は今、設計から開発、その後の分析までを一人で行えるオールラウンドプレーヤーである。

実験や開発が好きでリンテックに入社したと松下は言う。「入社してから、研究所や大学で、試行錯誤する大切さ、みんなの協力を得る大切さ、自分で設計する楽しさなど、ものづくりに必要な全てを学んだような気がします」。

松下はこれからの自分像をこう描いている。「ウインドーフィルムのスペシャリストになりたい。そして、それだけではなく自分の持っている技術をほかの部署の研究員に伝える役目を果たしていきたい。細かな技術もほかの製品に生かすことで、もっといい製品が生まれればいいなと思っています」。若い研究員が多いリンテック。松下のコミュニケーションが新しい夢の実現につながっていく。

ウインドーフィルムは、もっとエコできる

テレビのニュースや新聞を見ていても環境問題に目がいくという松下。今後、技術でかなえたい夢は何ですか?という質問にこう答えた。「まずは、より高断熱で高透明なフィルムをつくっていきたい。そして従来のウインドーフィルムの機能を超える、多機能な次世代型のウインドーフィルムをつくりたいと思っています」。

「当研究室では“リンテックファースト”という目標を掲げていますが、いつか、まだ世界にはないウインドーフィルムをつくりたいと思っています。例えば、真夏でも熱をまったく感じさせないようなフィルムとか。もちろん、室内の明るさや、透明性を保ったままでですよ」。

さらなる電力削減による省エネ、CO2排出量削減を実現するためには複合的な解決策が必要となる。その一つとして松下の開発するウインドーフィルムは、ますます活躍の場を広げていくだろう。

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