杉すぎもと本 茂しげるか な こ奈子PBR向上へ 三つの重要アクション取締役(社外) 監査等委員59 株主還元などの諸施策は継続的に検討・実現されつつありますが、やはり企業価値向上への根本的な問題は収益性の向上にあると思います。2025年3月期にオプティカル材事業部門では海外子会社の解散による収益改善を進めましたが、「他の事業部門では何が必要なのか」「各事業部門におけるQCDの問題点は何なのか」といった項目をより深掘りし、その現在地を取締役会にて随時報告していただくことで、対応策に取り組む必要があると考えています。 取締役会において、事業ポートフォリオの議論が始まり、それを継続していることは企業価値向上を実現するうえで PROFILE奥島 晶子 2025年3月期に過去最高益を達成されたことは、これまでの経営努力の成果であると認識しています。一方、PBRが1倍を下回る状況が継続していることは、真■に向き合うべき重要なテーマです。私が専門とする会計・税務の視点では、下記の3点が特に重要であると考えています。一つ目は資本コストを意識した経営の浸透です。事業のROICを常に把握し、資本コストを上回る収益性を確保する規律を徹底することが肝要です。二つ目は戦略的投資における規律の強化です。半導体関連をはじめとする成長領域への大型投資は当社の未来に不可欠です。ただし、その意思決定1981年に日本アイ・ビー・エム株式会社入社。その後、外資系IT企業などでデータを活用したマーケティングやコンサルティング業務に携わる。2001年にジェイビートゥビー株式会社を設立し、代表取締役社長に就任(現任)。2020年より当社社外取締役。2021年から当社指名・報酬委員会の委員を兼務。1983年に日本ペイント株式会社(現 日本ペイントホールディングス株式会社)入社。同社および同社子会社における役員経験のほか、事業運営や事業再編の責任者を歴任。また、技術者として長期の海外駐在を経験するなど、グローバルビジネスにも明るい。2024年より当社社外取締役に就任し、同年より当社指名・報酬委員会の委員を兼務。非常に有意義です。ただし、さらに踏み込むならば、今後は事業部門内外での連携がより重要です。事業部門内の観点では、各事業部門において海外売上高比率が大きくなっている以上、海外における各事業会社の効率性強化に取り組む必要があるほか、営業や生産部門を中心に国内と海外の積極的な人材交流が望まれます。事業部門外の視点では、事業部門間の横の連携を探ることが求められます。 当社の取締役会実効性評価は構造として好循環を繰り返しています。さらに、実効性評価が始まった当初に比べ、単年度で対応が終わる課題ではなく、複数年度にわたって継続対応が必要なものが増えています。事業ポートフォリオや人材育成に関する課題が代表的ですが、こうした点は高く評価できます。人材育成では、従業員全体に対して従業員サーベイの結果を踏まえた改善活動が既に実施されていますが、会社の将来を担う幹部人材層の育成についても今後、充実が図られていくことを期待しています。において、NPV(正味現在価値)やIRR(内部収益率)といった財務指標に基づく分析に加え、事業環境の不確実性を織り込んだシナリオ分析など、リスク評価をより精緻化することで、投資の蓋然性を高めていくことが必要です。三つ目は株主・投資家との対話の深化です。財務情報に加えて、当社の強みである技術力などの非財務情報が中長期的にどのように企業価値創造につながるかを具体的かつ統合的に示すことで、株主・投資家の皆様からの理解と信頼につながると確信しています。 取締役会実効性評価で優先課題とされた「事業ポートフォリオの最適化に向けた議論のさらなる深化」については、定量的データに基づく建設的な議論が活発化していると感じています。今後は各事業セグメントの資本収益性などの指標を継続的にモニタリングし、取締役会で定期的に議論する仕組みをさらに強化していくことが重要です。白幡 清一郎大澤 加奈子1998年に弁護士登録、梶谷綜合法律事務所入所。2005年に米国・ニューヨーク州の弁護士資格を取得し、国内外の企業法務に携わる。2015年に当社社外取締役(監査等委員)に就任し、2018年から当社コーポレートガバナンス委員会(現 指名・報酬委員会)の委員を兼務。2024年から同委員会の委員長。1982年に住宅・都市整備公団(現 独立行政法人都市再生機構)入社。1985年に太田昭和監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)に入所し、1988年に株式会社さくら綜合事務所(現 さくら綜合事務所グループ株式会社)を設立。公認会計士などとしてM&Aや事業再編・再生といったコンサルティング業務に携わる。2021年に当社社外取締役に就任し、同年より当社指名・報酬委員会の委員を兼務。2023年から当社社外取締役(監査等委員)。杉本 茂事業部門内外の連携を 強化して企業価値向上へ取締役(社外) 監査等委員 おおさわ澤 加大
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