統合報告書2025
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 当社の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」は、年々着実に進化しています。2025年3月期は過去最高益を実現すると同時に、懸案事項であった洋紙事業部門において減損損失を計上するなど、収益性改善に向けた取り組みは申し分ないと思います。また、サステナビリティ活動のほか、株主・投資家との対話も質・量ともに充実が図られていると評価しています。しかし、施策の実行と適正株価の形成には往々にしてタイムラグが生じることは理解しているものの、現在の株価水準は前述したような  当社の収益性改善・投下資本コストの回収において、現在取り組んでいる事業ポートフォリオの最適化検討は有効な手段です。特に全社と個別事業をROICとEVA(経済的付加価値)を併用しながら複数年度で比較することでトレンドを把握し、実行すべき施策の議論につなげるプロセスは企業価値向上に効果的です。現在、海外売上高比率が60%超となり、さらなる拡大も予見される中で、海外子会社のパフォーマンス向上が会社全体の評価に直結します。だからこそ海外の現地パートナーとのコミュニケーション58せいいちろう企業努力が反映されておらず、株主・投資家の期待値とは依然としてギャップが存在するように感じています。取締役会では前期より事業ポートフォリオの最適化に向けて、各事業部門長から直接、SWOT分析などの詳細を説明していただき、各事業部門が目指す姿や個別施策の背景についてより精緻な議論ができるようになりました。こうしたさまざまな活動の成果が可視化されるまでのストーリーを株主・投資家に示すことで、期待値とのギャップを埋めることができると考えています。 事業部門長からの丁寧な説明を通じて、当社グループへの理解が深まっていることは確かですが、私個人としては海外子会社については本質的な課題まで理解が及んでいないことも事実です。当社はグローバルに事業を展開していることからも海外事業の変化要因の見える化がさらなる企業価値向上を目指すに当たり、重要であると認識しています。の重要性は再認識すべきです。それは決して子会社管理として細やかなガバナンスを効かせるという意味ではありません。“価値観を共有するコミュニケーション”が何より重要です。同じ目標を持つパートナーとして積極的に権限委譲して能動的に動いてもらったり、計数を含めた各種情報をタイムリーに共有化したりすることを通じて、目指す方向性にずれを生じさせないコミュニケーションを期待します。 当社は積極的に成長投資をする会社であると認識しています。私は2024年6月に開かれた株主総会を経て社外取締役に就任しましたが、この1年間、取締役審議会を含め、執行サイドからの成長投資に関する提案・説明を受けて議論を深めました。将来の果実をつかむには、継続的な成長・開発投資が必要であり、そのためには稼ぐ力を伸ばすことが欠かせません。今後も取締役会メンバーとさらに緊張感を持った議論を進めることで、持続的成長を目指していきます。 資本コストや株価を意識した経営、事業ポートフォリオの最適化など、リンテックは今、企業価値向上に向けた改革を推進しています。2025年6月に開催された株主総会で再任された奥島晶子氏、白幡清一郎氏、 大澤加奈子氏、杉本茂氏の4人の独立社外取締役の皆様に客観的立場から当社の経営やガバナンスへの評価、企業価値向上への課題などについて伺いました。取締役(社外)あきこおくしま島 晶奥子取締役(社外)しらはた幡 清白期待値とのギャップを 埋めるストーリー価値観を共有する コミュニケーション一郎独立社外取締役メッセージ

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