EUVペリクル26成長分野2 成長分野に位置づける半導体関連事業では、ビジネス領域の拡大を目指すプロジェクトが進行中です。それが、EUV露光機用CNT(カーボンナノチューブ)ペリクルの量産体制確立に向けた取り組みです。ペリクルとは、フォトマスク(回路パターンの原版)への異物の付着を防ぐ防塵膜の役割を果たす部材です。従来はポリシリコンなどをベースとする素材が使われてきましたが、近年は半導体の微細化に不可欠なEUV露光機の性能向上に伴い、CNTを用いた高耐久で信頼性の高いペリクルの必要性が高まっています。当社グループは要素技術の確立後、半導体製造装置の設計・開発ノウハウなどを生かして、独自設計の量産機の開発にも成功。2024年9月には、国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究の成果も基に、量産化の見通しが立ったことを発表しました。現在、お客様へのサンプル提供および評価を仰いでおり、2026年3月期中の量産体制の確立に向けてスケジュールどおりに歩み続けています。ペリクルはこれまで当社が開発してきた半導体製造の後工程で使われるテープ素材とは異なり、半導体製造の前工程で使われる部材です。当社にとっては新規領域への挑戦となり、乗り越えなければならない壁が多いことも事実ですが、社内外の知見や技術を結集して半導体関連事業の強化・拡大を目指す試みにご注目ください。吾妻工場に新設した新型塗工設備熊谷工場に増設した積層セラミックコンデンサ関連テープの新工棟EUVフォトマスクEUV光源反射鏡ウェハ半導体関連事業エレクトロニクス関連市場の拡大を見据えて P.24で記載したとおり、世界の半導体市場は用途によって需要が二極化するまだら模様を呈しながらも、生成AI向けの先端品をけん引役として、安定成長が予測されています。当社では中長期的な半導体市場の拡大を見据え、徹底的に経営資源を投下しています。半導体関連製品の中核生産拠点である吾妻工場(群馬県)では、約45億円を投資して最新鋭の新規クリーン塗工設備や裁断設備、自動ラックなどを導入、各種テープの厚み精度向上や安定供給体制を強化しました。生産能力が大幅に高まったことで、半導体メーカーの増産時に各種テープを安定供給することが可能となり、販売機会のロスを最小限に抑えることができます。また半導体関連以外でも、土居加工工場(愛媛県)や熊谷工場(埼玉県)で2025年3月までの4年間に総額約200億円をかけて、積層セラミックコンデンサ関連テープの生産設備を大幅に増強しています。こちらも今後増える需要に見合うよう生産能力の増強を図った設備投資となります。 研究開発分野では、先端半導体の後工程におけるパッケージング技術に関わる新たなテープや装置、独自プロセスの開発などを重点テーマに取り組みを進めています。半導体業界は画期的な製品開発に成功しても、確立された半導体製造プロセスを変更して歩留まりが悪化することなどを避けるため、即時採用につながる世界ではありません。だからこそ当社は、お客様との密な対話や関係機関・団体との意見交換などを積極的に行い、5、6年先の世界におけるデファクト・スタンダード(事実上の標準)を目指して活動しています。EUV露光機用CNTペリクル量産体制の早期確立を目指すEUV露光機内のイメージ
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