統合報告書2024
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* NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構35 当社では、2024年5月に新製品「バンプ保護フィルム」を上市しました。同フィルムは半導体ウェハに形成したバンプと呼ばれる基板接続用の突起電極を樹脂で保護して、半導体チップの耐久性や信頼性を向上できます。近年、電子機器の小型化や軽量化、高機能化が進む中、そこに搭載される半導体パッケージについても小型化・軽量化、基板への高密度実装が求められています。このような背景を受けて、ウェハ上でパッケージとしての処理を加え、最終的にウェハ切断後、基板に直接チップを実装する「Wafer Level Chip Scale Package(WLCSP)」と呼ばれるパッケージング技術が注目されています。一方で、WLCSPの構造上、基板接続用の電極として突起状のバンプが形成されており、熱による変形や応力などの負荷が掛かると、この部分にクラック(亀裂)が生じる課題がありました。「バンプ保護フィルム」はこの課題を解決し、半導体チップの耐久性や信頼性向上に寄与することができます。バンプの形状や大きさの違いに応じてカスタマイズし、お客様のウェハに最適な提案を行うことで、拡販を目指していきます。 現在、半導体の需給バランスの崩れや用途の拡大に伴い、偽造半導体問題が深刻化しています。偽造品はセキュリティー上、重大なリスクをもたらすだけでなく、国の経済安全保障にも関わります。世界的にも重要な課題となる中で、当社では内閣府や経済産業省などが推進する国家プロジェクトの一環として「NネドEDO*」が公募する半導体の偽造防止技術確立に向けた研究開発事業に参画しました。当社独自製品である「チップ裏面保護テープ」上に特殊なインクジェット印刷などを施すことで、固有の特徴を持たせ、半導体チップの真正性を保証します。この偽造防止技術開発については、産学官が連携し共同で取り組んでいきます。  当社グループでは、EUV露光機用CNTペリクル(防塵材料)の要素技術を確立しました。ペリクルとは、フォトマスク(回路パターンの原版)への異物の付着を防ぐ防塵膜の役割を果たす部材です。従来はポリシリコンなどをベースとする素材が使われてきましたが、近年は半導体の微細化に不可欠なEUV露光機の性能向上に伴い、CNT(カーボンナノチューブ)を用いた高耐久なペリクルの必要性が高まっています。当社グループでは、CNTシートを開発する米国テキサス州の研究開発拠点「ナノサイエンス&テクノロジーセンター」にて、以前からCNTの新たな用途展開を模索してきました。今回の要素技術確立は2018年に始まったCNT製ペリクルの開発に向けた挑戦が結実した格好となり、足元では約50億円を投資して、 2026年3月期までに第一次量産体制の構築に取り組んでいます。これまで当社が開発してきた半導体製造の後工程で使われるテープ素材とは異なり、ペリクルは半導体製造の前工程で使われる部材です。当社はCNT製ペリクルを起点として新規領域を開拓し、半導体関連事業のさらなる拡大につなげていきます。半導体チップの断面図「バンプ保護フィルム」と半導体ウェハテープに意図的にランダム性を持たせた特殊印刷(ID付与)などを施すことでチップの真正性を保証ウェハEUVペリクルEUV露光機内のイメージEUVフォトマスクEUV光源反射鏡EUV露光機用CNTペリクルの要素技術を確立半導体チップの耐久性や信頼性向上に貢献する「バンプ保護フィルム」を発売開始半導体の偽造防止技術確立に向けて国家プロジェクトに参画

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