27 昨今、スマートフォンや電気自動車、高速通信規格「5G」向けなどの需要拡大に伴い、各種半導体や電子部品の需要が拡大しています。また、生成AIという新たな技術トレンドを背景に、データセンター向けの先端半導体市場も活況を呈しています。当社ではこれらエレクトロニクス市場の拡大を受け、生産能力の増強を進めるとともに、半導体ウェハを薄型化する裏面研削工程で使われる回路面保護テープなどの性能向上や品質保証体制のさらなる強化を通じ、高度化する要求品質を満たす製品供給体制の構築に努めています。半導体関連粘着テープの中核生産拠点である吾妻工場では、約45億円を投じて、最新鋭の新規クリーン塗工設備や裁断設備などを新たに導入しました。また、電子部品の製造に欠かせない積層セラミックコンデンサ関連テープの増産に向けては、土居加工工場(愛媛県)や熊谷工場(埼玉県)において、総額約200億円をかけて生産設備の増強を段階的に進めています。今後も継続的な設備投資を通じて、エレクトロニクス市場の成長を確実に取り込んでいきます。 合成皮革用工程紙や粘着製品用剥離紙などを製造する小松島工場では、約42億円を投じて新たな工場棟の建設をスタートしました。新棟で製造する工程紙は、靴やかばんなどに使われる合成皮革の製造工程において、合成皮革の表面に柄や光沢感などを付与するために利用されます。現在、インドや中国などの国々では、経済発展に伴い、合成皮革を用いた製品の需要が拡大しています。今回の生産能力増強は、そうした海外市場での新規需要を取り込むための施策の一環となります。新棟に導入予定の塗工設備では、従来設備よりも幅が広い工程紙を製造可能です。広幅工程紙と呼ばれるタイプは海外で主流となりつつあり、自動車の内装用途などでニーズがあります。新棟では紙の入出庫といった工場内の物流のほか、薬剤の調合作業などの自動化を計画しており、現場従業員を増員せずに生産量を増やせる効果があります。また、塗工材料のロスを最小限に抑えられる高効率の生産システムを設計しています。太陽光発電設備の設置によるCO2排出量削減など環境負荷低減の取り組みと併せて、持続可能な生産体制を確立していきます。吾妻工場に新設した新型塗工機小松島工場新棟の完成イメージ 当社は2027年3月期までの3か年のキャッシュフロー約1,300億円のうち、成長投資として約600億円の設備投資を計画しており、旺盛な需要に対応できるよう供給体制を強化します。省エネや高品質、高効率、省人化を目的とした新規生産設備の導入など、成長分野である半導体関連製品や海外市場での新規需要を取り込むための施策を加速させます。エレクトロニクス市場の成長を見据えた継続的な設備投資 新棟を建設し、合成皮革用工程紙の海外展開を強化 製造資本強化FOCUS
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