統合報告書2021
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45 米国の研究開発拠点であるナノサイエンス&テクノロジーセンターでは、カーボンナノチューブのシート化技術の確立などに注力しています。カーボンナノチューブは炭素でできた直径がナノ(10億分の1)メートルレベルの筒状の素材で、軽量ながら強度に優れ、高い導電性と熱伝導性を有しています。同センターではカーボンナノチューブをシート状と糸状に加工する技術を開発。各種センサー用途などで市場開拓を図っているほか、半導体ウェハに微細な回路を形成することができるEUV露光装置用の「ペリクル」と呼ばれるフォトマスク(回路原板)防塵カバーの開発・事業化に注力しています。 当社では熱を活用する特殊シート部材の開発も推進しています。電気を通すと発熱するフィルムヒーターは、当社独自の配線技術・シート技術を駆使して高い透明性と曲面追従性を実現し、自動車や通信設備のセンサー部分をはじめ、信号機・標識などへの着雪・着氷を防止する材料などとして提案しています。また、5Gの普及によってデータ通信が高速・大容量化することなどに伴い、電子デバイスが発熱しやすくなることから、電気を流すと熱を吸収・放出するペルチェ効果を利用した薄型軽量冷却シートの開発を進めているほか、工場の排熱などを電気エネルギーに変換できる薄型熱電発電シートの開発にも取り組んでいます。 リサイクルに配慮した製品展開の一環として、高周波を当てると溶融し、ステンレスと樹脂など異種材料を接合することができる高周波誘電加熱接着シートを開発しました。従来の液状接着剤と同等の接着強度がありながら作業時間を短縮でき、高周波を再度当てれば接合物を容易に解体してリサイクルできます。VOCの排出量も抑制し、自動車や建材、アパレル分野など幅広い用途での展開を目指しています。 そのほかにも、電気を通すことで粘着力が大幅に低下する電気剝離型粘着シートは電子機器や自動車関連の部材を接合する用途での採用が期待され、金属やプラスチック部材のリサイクルやリユースの促進に貢献します。カーボンナノチューブ自動車のセンサー部分などへの使用を想定するフィルムヒーター高周波により接着シートが溶融し、異種材料を接合電気を通すと簡単に剝がすことができる粘着シート糸状にしたカーボンナノチューブを グローブに編み込み、センサーとして活用高周波誘電加熱 接着シート被着体5G対応電子デバイスの熱制御に効果的な薄型軽量冷却シート高周波+加圧リンテック 統合報告書 2021高周波誘電加熱接着シート独自技術を生かしたカーボンナノチューブ製品 熱の特性を利用した各種シート部材リサイクルやリユースに貢献する特殊接着・粘着シート

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