CSR

第三者意見

TCFDの義務化や開示ルール標準化など、企業の非財務情報開示を巡る国際的な変化は激しく、対応の難易度は確実に上がっています。LINTEC CSR REPORT 2021は、長期ビジョンや改定マテリアリティなど、環境変化に対応すべく、新たな取り組みを講じています。
今回追加された情報により、現在、非財務情報開示で注目される主なパーツはカバーされました。特に、長期ビジョンを中心に据えることで、レポート全体で統一感が強まった点は大きな進展です。①社会課題の解決、②イノベーションによる企業体質の強化、③持続的成長に向けた新製品・新事業の創出を三本柱とするビジョンは、課題解決を通して社会に価値を提供しながら成長する戦略と、イノベーションや新商品・新事業の創出能力という、それを支える要素を一体的に示すことで、長期的なビジネスモデルの持続可能性を効果的に示唆しています。
トップメッセージは、この長期ビジョンを、制定過程の議論も含めて詳しく紹介することで価値創造のシナリオを分かりやすく伝えています。加えて、従業員一人ひとりの意識と行動の変革の重要性が強調され、新しいフレームワークの下でも、ステークホルダーとしての従業員を重視する経営が堅持されていることが分かります。特に、SDGs委員会による新規ビジネスアイデアの提案活動は、従業員がサステナビリティを自分事として捉え、全社一丸でSDGs経営を進めるための仕組みといえ、「これからの製品づくりは、専門の部門だけに任せるのではなく、全従業員で考えていくべき」という社長のお考えを体現する活動として印象的です。
これまでの特徴を活かしつつ、非財務情報開示の最新トレンドへの対応に努めており、高く評価できる内容ですが、さらなる進化へ向けて幾つか期待したい点を申し上げます。
まず、今回加わったパーツ同士をより体系的に接続することです。例えば、長期ビジョンと今回改定されたマテリアリティを、KPIを用いてより有機的に結びつけるのも一法です。マテリアリティについては、ビジネスモデルに影響する要素に絞る機関投資家向けと、マルチステークホルダーを重視する方向との選択に悩む企業が少なくないように、色々な考え方があります。LSV2030に伴う新マテリアリティは、抽象度を上げ、今後進められるKPIの設定に一定の自由度を与える形になっています。将来のさまざまな変化を柔軟に取り込むダイナミックさを重視した、新しいマテリアリティの方向性にも通じる良さがあります。この点を活かすためにも、このマテリアリティに対応するKPIを検討する際には、長期ビジョンが謳う「社会課題の解決」との接続を強く意識していただきたいと思います。事業を通じた社会課題の解決がもたらす価値(インパクト)を把握・計測して、KPIとしてコミットすれば、ビジョン、マテリアリティ、価値創造シナリオを一層有機的につなげることになります。
次に、「人」についての情報開示の拡充です。長期ビジョンの達成に向けた人材戦略と、人的資本にかかるKPIの設定が期待されます。これは、今後、社会性項目に関する情報開示でも競争が激しくなる中で、貴社の特徴・強みを社内外に発信し続けるための有効な武器になるでしょう。
長期ビジョンの考え方を社内に浸透させるStage1と位置づけられた2021年度は、こうした議論を本格化する良いタイミングと思われます。幅広い従業員を巻き込んで議論ができる貴社の強みを活かしつつ、新たに設置された「サステナビリティ委員会」など強化されたガバナンス体制も活用して、新たな方向性を一段と明確にされることを期待しております。

竹ケ原 啓介氏
株式会社日本政策投資銀行
設備投資研究所
エグゼクティブフェロー
竹ケ原 啓介氏

第三者意見を受けて

当社の長期ビジョンと改定マテリアリティについて、高いご評価を頂きありがとうございます。
長期ビジョンの達成には、従業員一人ひとりが行動と意識を自分事として変化させ、取り組む姿勢が重要となります。そのために、まず長期ビジョンの考え方を社内に浸透させるとともに、多様なメンバーが集結しているSDGs委員会のように従来の組織の枠組みを超え活発な議論を行う環境をつくっていきます。
また、マテリアリティにKPIを設定することにより、長期ビジョン、マテリアリティ、人材戦略を有機的に結びつけ、事業を通じた社会的課題の解決に取り込んでいくことで、長期ビジョンの達成を確実なものにできると考えております。さらに、新たに組織したサステナビリティ各委員会・分科会による実効性をもった各施策の遂行を通して、さまざまな情報開示要請にもしっかりと適応していきます。
今後も、社是「至誠と創造」を根幹に、サステナブルな社会の実現に貢献できる企業グループを目指していきます。

代表取締役社長 社長執行役員
服部 真