“環境配慮型ラベル素材”でリサイクルを促進。

“環境配慮型ラベル素材”でリサイクルを促進。

PROFILE

富能 智諭(とみの ちさと)
芝浦工業大学 工学部 工業化学科卒。2004年、リンテックに入社。粘着材料研究室に所属し、数々の製品開発を経て、現在は環境配慮をコンセプトとするラベル素材「カイナスシリーズ」の開発に従事。丁寧な分析とマイペースな性格でコツコツと開発を進める研究所のエコラベルウーマン。
※なお富能は現在、構造解析研究室に所属し、新たな研究分野で活躍中。

あらゆるものに“エコ発想”が求められる時代。シャンプーボトルやOA機器など、世の中のさまざまな製品に貼られるラベルはどうあるべきか。その答えの一つが、リンテックが開発したプラスチック成形品同質同素材ラベル「カイナスシリーズ」だ。この製品には、果たしてどんな秘密があるのか。開発に携わる研究員、富能に密着した。

Chapter 01

資源の有効活用に貢献するラベル素材を開発

貼ったままリサイクルできないか、その課題に応えるラベル素材。
地球に優しいラベル素材を目指して

ラベルにできるエコとは何か。その答えの一つが、富能が開発に携わっている環境配慮をコンセプトとするラベル素材「カイナスシリーズ」だ。“Kind to the earth(地球に優しい)”がその製品名の由来となっている。このラベル素材の価値を一言で言えば「貼られる製品のリサイクル(再生利用)を促進するラベル」。プラスチック成形品と同じ材質のフィルム基材を採用することで、ラベルが貼られた状態でもそのままリサイクル処理することが可能。これにより、回収した後のラベルを剥がす手間を省くことができる。

家電リサイクル法なども受け、高まりを見せているリサイクル志向。それに後押しされる形でニーズが拡大しているのがこのラベル素材である。富能はこの製品の汎用性をさらに高めるために、日々研究に励んでいる。「これは、“貼ったままリサイクルできないか”というクライアントの声から開発された製品です。私たちはそれに“剥がしてリユース(再利用)する”という選択肢をプラスして、『カイナスシリーズ』再剥離タイプを開発しました」。富能はその後も研究を続け、この製品はさらなる進化を遂げている。

開発テーマは「同質同素材」+「再剥離性」

「同質同素材」と「再剥離性」を追究したラベル素材「カイナスシリーズ」再剥離タイプ。開発に当たっては多くの課題が浮上した。「同質同素材」という側面から見ると、表面基材との相性を考慮して粘着剤を開発しなくてはならない。「再剥離性」という側面から見ると、剥がす時には、貼られる対象物の表面を傷めず、さらに粘着剤が残らないようにすることが求められる。そのうえで、ラベルの要求性能である曲面追従性や意匠性も重視しなければならない。課題を挙げれば切りがない。しかし、そうした課題をクリアしてこそ、革新的な製品は生まれる。

リユース・リサイクル対応ラベル素材

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Chapter 02

「分析結果の蓄積」が、開発の扉を開く

変化を見落とすことがないように、丁寧に検証することが重要。
未知の素材で、理想の“剥がしやすさ”に挑む

課題は貼られる物の表面形状とも関係する。「カイナスシリーズ」再剥離タイプは家電製品やコピー機などの、凹凸のある面に貼られることが多い。機器の使用中にはしっかりと貼られていなければならない。また、コピー機をはじめとするOA機器は、熱を持つことが多い。それによる粘着力や剥離力の変化も考慮に入れなくてはならないのだ。

そんな中でも、やはり“剥がしやすさ”への対応はハードルが高い。「表面基材の材料を検討して、それに合う粘着剤を選定するか、新たにつくるかして、剥がしやすさを検証します。剥がしやすさについては評価が難しいので、実際に剥がしてみた時の感覚的なものと、物性を測定してどういう値になるかの両面から見ていきます。要求されている剥がしやすさを把握するのは難しいんです。だから、これまで私たちが開発してきた製品をサンプルにして、それを試してもらい、もっと剥離力を軽くとか重くというやりとりを重ねて、理想の剥がしやすさに近づけていきます」。

リンテックの強み、それは分析力

課題を解決する鍵は?という質問に富能はこう答えた。「私は、分析力だと思います。私の所属する研究室だけでなく、どの研究室も分析を徹底して行っています。粘着力や剥離力、素材の物性変化などはもちろん、最近では素材の選定や粘着剤の物性だけでなく、素材そのものの組成やその変化についての分析まで行うようになっています。試験を行い、どういう変化が、いつ、いかなるときに起こるのか、それを丁寧に検証する。その分析結果の蓄積と経験から生まれる発想が、開発を進める鍵になります。また、それぞれの研究分野は多岐にわたっているので、ほかの研究室との意見交換で、意外なところから開発のヒントが得られることもあります」。

そんな富能をはじめとした開発チームの力により、さまざまなニーズに対応した豊富なラインアップを取りそろえている「カイナスシリーズ」。表面基材のバリエーションも充実し、幅広い分野でリユース・リサイクルの促進に貢献している。「将来的に実現できたらいいなと思うのは、究極のエコラベル。それは、使用したラベルを回収してリサイクルし、またラベルとして再生することができる製品。無駄を徹底的に省けますからね」。そんな大きな夢を抱く富能のこれからに期待したい。

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Chapter 03

小さな発見の積み重ねが、地球を守る一歩になる

地球と人の未来をつなぐ技術で次世代のラベル素材をつくりたい。
私が研究員になった理由

「正直マニアックそうだなと思いました」。それが、富能がリンテックに抱いた最初のイメージだ。「入社してみたら、やっぱりマニアックでしたね(笑)。ただ、扱っている製品や技術の奥深さに驚きました。ふだん何げなく使っているラベルにも、実は多くの技術が集約されている。要求性能は用途や使用環境によってさまざまで、たくさんの苦労があって開発されている。そんなこと、研究員にならなければ気づくことができなかったと思います。それと、リンテックの製品は世の中のいろいろなところに関わっている。だからこそ、やりがいがあります」。

そんな富能が研究員を目指したきっかけは、高校時代の恩師との出会い。数学の教師であり、担任でもあった彼の元、ホームルームの時間も数学の問題に取り組んだ。「だんだん没頭していき、数学とか化学が好きになっちゃったんです」。数学に魅せられて理系に進んだ富能。リンテックに入社したときは、大学時代に学んだ分野が認められ、希望していた研究員として配属となった。それ以来、今日まで開発にいそしんでいる。

“丁寧”が、未来を変える

日々、ラベル素材と向き合う富能。仕事に臨むとき、大切にしているのが、起こっている現象を一つ一つ丁寧に見極め、少しの変化も見逃さないこと。富能は、小さな発見にこそ課題解決のヒントが眠っていると考えている。「小さな発見の積み重ねが後々、課題を解決する糸口になるかもしれないですからね」。

そんな富能に、技術でどんな夢をかなえたいかと聞いてみた。「今は、リサイクルをテーマに製品開発をしているので、何かをリサイクルすることによって、新しいものがつくられて、別の人にとって役立っていく。その循環を新たに生み出すラベル素材をつくっていきたいですね。それは小さなことかもしれないけれど、確実に地球と人の未来につながる仕事だと思うので。技術で、いろんな人の夢をかなえられたらいいなと思います」。今の自身の目標は「ずっと働き続けること」と語る富能。その場その場で自分のベストを尽くしていきたいという彼女になら、次世代のラベル素材が生み出せるかもしれない。

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