一歩先行く“知的財産管理”で、発明をサポート。

一歩先行く“知的財産管理”で、発明をサポート。

PROFILE

亀島 敦子(かめしま あつこ)
山形大学大学院理工学研究科卒。2002年、リンテック入社。素材設計研究室にて製品開発に携わり、出産・育児休暇を経て復帰後、知的財産部特許管理課にて、特許の出願や調査などに携わる。育児と仕事を効率良くこなす研究所のパイオニアウーマン。

“技術立社”リンテックの生命線とも言える特許権をはじめ、商標権、意匠権などの管理をする知的財産部。中でも、社内の研究員の発明を発掘し、特許出願・登録につなげていく重要な橋渡し役となるのが、リエゾンの仕事だ。知的財産部とリエゾンの仕事について、元研究員、そして今は1児の母でもある亀島敦子に尋ねた。

Chapter 01

結婚・出産を経てたどり着いた、「知的財産管理」という仕事

研究員の発明が社会にちゃんと認められるよう見守るのが私の仕事。
復帰か、退職かで揺れる心

亀島が1児の母として今に至る経緯は、大学院時代に遡る。もともと研究員の道を目指していた亀島は、先輩の薦めもあってリンテックに入社。配属された先は、大学院で学んだ高分子化学の知識が生かせる素材設計研究室であった。そこで亀島は4年間研究員として勤務する。そんな中、亀島は結婚・出産を経験し、一時休職。母となる喜びを感じると同時に、会社に復帰するか、このまま退社するかのはざまで揺れていた。

亀島は最初、出産を機に会社を辞めようと思っていた。しかし、たとえ困難があっても、自分が再び仕事を続けていくことで、後輩である女性研究員たちにとって新しい道が開けるとも思った。「自分の母親は今でも働いていています。そんな先輩が身近にいたからこそ、復帰にぜひ挑戦したいと思いました。それに、同じ研究の職に就く主人も続けるべきだと背中を押してくれました」。そんな周囲の環境もあり、亀島は職場復帰を決意した。

知的財産部の仕事とは?

亀島が現在所属している知的財産部は、主にリンテック製品の特許権や意匠権、商標権などの知的財産権を取り扱う部署だ。具体的な業務は先行文献調査や出願業務、発明の発掘、技術契約の審査など多岐にわたる。亀島の担当は、特許を取るための調査と出願。リンテックが新たに開発しようとしている技術や分野の中で、既に世の中に出ている先行技術かどうかを調べたり、販売しようとしている製品に対して、同じ性能のものが市場で既に出回っていたりしないかどうかを調べる侵害調査などである。「特許庁が公開している数百万件もの膨大なデータベースから調査をしていきます。先行事例がないようにと祈りながら、もしあった場合には、どう出願すれば先行事例と差別化して特許になるかなども考えます」と亀島は語る。

特許出願の際は、まず研究員が書いた出願依頼書を知的財産部が受け取り、補足データを追加する。そして弁理士との打ち合わせを経て、やっと特許庁に出願できる。もちろん、特許が下りるまでの道のりはまだまだ長いのだが。「研究員の発明が社会にちゃんと認められるよう見守るのが私の仕事だと思います」。独自の技術力を強みとするリンテックにとって、知的財産部の仕事はとても重要。この仕事が的確に遂行されなければ、研究員の開発が無駄になる恐れもある。新技術の価値を正しく社外に伝え、これを自社の財産として確実に保護するという意味で非常に重要な仕事なのだ。

ますます重要度が高まる知的財産管理

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Chapter 02

発明を育む「研究員」と「リエゾン」のコラボレーション

「提案型の知的財産管理」をさらに増やせたらいいですね。
新たな発明を導き出すために

研究所内で勤務する知的財産部員はリエゾン(研究員から発明を発掘して弁理士に引き渡す仲立ちの仕事を行うスタッフ)という形で研究所に常勤している。亀島は今、素材設計研究室の担当。リンテックの中でも、中・長期的な視点で次世代技術の基盤をつくる研究室なだけに、さまざまな発明が生まれる部署だ。亀島は研究員が見逃している小さな発明まで光を当てられるよう先行調査をすることや開発をサポートすること、出願計画を立てることなど日々率先して業務に励んでいる。研究所内でのグループミーティングに参加するときも、ただ研究員からの相談を聞くだけではなく、狭い範囲で考えがちな研究員の視野が広がるよう、常に「こんな分野の開発はないか」と提案するよう心掛けているという。

広い視野を持ちつつ業務に携わっている亀島。苦労している点は?との問いに亀島はこう答えた。「出産・育児休暇中の空白の時間を埋めるのに苦労しています。この間に、社内の技術がすごく進歩していましたから・・・」。しかし、彼女は今も高分子学会に所属し、研究員と同じ目線で最先端技術の情報収集に努めている。また、実作業の文章読解の点でも大変さがあるという。「大学の研究では、論文の内容が分かればよかったんですが、特許資料は一字一句注意して読まないといけないので大変ですね」。亀島は着実に結果を出し、多忙な中にも充実感を見いだしているようだ。

「提案型の知的財産管理」で研究員をサポート

職場復帰後には、大学時代の研究が引き続き生かせる基礎データの分析の業務を希望していたが、知的財産部に配属となった亀島。しかし彼女は今、この仕事に出会えてよかったと話す。「この部署ではいろんな人と話ができるのが楽しい。営業担当者や初対面の研究員と話をする機会が多くなりましたし。リンテックの技術や製品についても、より詳しく知ることができるので以前より好奇心が湧くようになりました」。

今後この仕事に求められるものとは?との質問に亀島はこう答える。「以前は研究員から依頼されて動くスタンスの仕事が多かったですが、今は逆にリエゾンが開発分野を提案している部分もあります。そういった『提案型の知的財産管理』をさらに増やせたらいいですね。そうすれば、もっともっと新しいものを世の中に届けられますから」。亀島が担当した材料が身近な製品として私たちの前に現れる日も近いかもしれない。

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Chapter 03

新たに見いだした「働き方」と「これからの夢」

困ったときに、「あっ、亀島に聞こう」と言われる人になりたいです。
母になって変わった、亀島流仕事術

研究員だった亀島は職場復帰後、知的財産部への異動を言い渡されたときのことをこう語る。「もともと復帰したら研究員の仕事は難しいとは思ってはいたものの、最初はやはりショックでした。ただ研究所長からじきじきにリンテックで働くママさん社員の模範になってくれという話があり、そういうことならぜひ新しい分野に取り組みたいと思うようになりました」。

母親になって仕事への取り組み方も変わったという。「メリハリをつけて仕事をするようになりました。保育園へ子供のお迎えがあるので、ダラダラ仕事をしてしまうと時間に間に合わなくなってしまう。いかに効率良く仕事をするかを考えて行動しています」。また、肩の力を抜いて仕事に取り組めるようになった部分もあるそう。結婚前は女性だからといって仕事を区別されるのではと思い、必要以上に頑張り過ぎていた。しかし、出産を経て周囲の人たちの助けを借りて生活する中で、その考え方も変わってきたという。分からないことは自分から率先して聞くなど、より柔軟に人とのコミュニケーションが取れるようになったそうだ。母になり、亀島はより良い働き方を見いだしたのだ。

女性は研究職に向いていると思う

亀島にこんな質問をしてみた。女性の視点から今後リンテックに入社してくる人へのメッセージは?「私が思うに、女性の方が男性よりもあたふたせず、落ち着いて柔軟なものの考え方ができるのでは(笑)。だから、今後は優秀な女性研究員がもっともっと世の中を引っ張っていける時代になったらと思っています。女性の場合、いかに優秀な人でも、出産や育児を理由に退職していくことがどうしてもあります。でも、会社が真に技術力を伸ばしていくためには、いかに女性の研究員を働きやすくするかということも重要になってくると思います」。

働く女性社員の手本として周囲を引っ張る亀島。そのビジョンは彼女自身の目標へとつながっていく。「困ったときに、『あっ、亀島に聞こう』と言われる人になりたいです。どんな研究分野のことでもいいので、初めの相談窓口になれたらなぁ、と」。その目標を実現するためにいろいろな製品や人と積極的に関わり、常に提案型のリエゾンを目指す亀島。彼女は今日も、世の中の夢をつなぐリンテックの新技術を見いだすため、研究所内を奔走している。

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