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特集1 持続的成長を遂げる企業であるために
全社を包括する事業継続マネジメントシステム
(全社BCMS)の構築を目指す

リンテックでは、各事業部門・各拠点においてこれまでも予期せぬ自然災害や重大事故の発生時に対応する手順を定めたBCP(事業継続計画)*1を策定してきました。
2013年度には、それを基礎に全社BCMS(事業継続マネジメントシステム)*2の構築を目指し、リンテックが持続的成長を遂げる企業であるための体制強化を図りました。
本特集では現在までの歩みをご紹介します。

  • *1BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)の略称。企業が事故や災害などの緊急事態に遭遇した場合、損害を最小限にとどめつつ、事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために事前に策定された行動計画。
  • *2BCMS:Business Continuity Management System(事業継続マネジメントシステム)の略称。企業の重要な製品またはサービスに重大な影響を与えるインシデント発生の際に「事業を継続」するため、組織の現状を理解して事業継続計画を策定し、演習により計画の実効性評価を行い、システムを運用するマネジメント手法。
全社BCMS構築までの流れ

事業継続は企業が果たすべき大きな社会的責任

サプライチェーン*の複雑化や事業領域の広域化が進む中、企業が社会に対して与える影響は拡大しています。そのような中でリンテックグループは中間素材メーカーであり、また事業領域は多岐にわたることから、万一、事業活動が停滞すると社会に大きな影響を与えてしまうことが予想されます。当社が企業としての社会的責任を果たすためにも、BCP、さらにはそれを効果的に運用するBCMSの構築は、欠かすことのできない重要なテーマでした。

  • サプライチェーン:原材料の調達から生産・販売・物流を経て最終需要者に至る一連の流れ。

本当の事業継続には全社の力を合わせることが必要だった

「2009年から関連部署の協力を得ながら、事業部門を中心にBCPの策定を進めていました」と、今回、全社BCMS推進チームのリーダーとしてチームを率いたCSR推進室の真木亨(以下、真木)は振り返る。

「当時はまだ日本にも参考となる情報が少なく、計画づくりにも時間が掛かっていました。しかし、その策定途中で東日本大震災を経験。会社の内外でBCPの重要性についての認識を一気に高めることになりました」(真木)

やがて6事業部門についてBCPの骨格が完成します。しかし、その計画をさらに実践的なものに仕上げるために壁があったとCSR推進室の森尾定和(以下、森尾)は語ります。

「各事業部門、生産拠点の計画としてはある程度まとめることができましたが、事業継続のためには、どうしても部門の壁を越えることが必要になります。ところが当時は、その壁を越えたルールがありませんでした」(森尾)

その後、真木と森尾はBCPをより完成度の高いものとするために全社を巻き込み、しかもBCPで終わらせるのではなく、その計画を不断に見直し高度化していくBCMSとして確立することが必要だと考えるようになりました。

営業・販売部門を加えた全社BCMSの構築に踏み出す

課題の一つは、営業・販売部門での取り組みの難しさでした。

「生産拠点ではBCPに対する理解や心構えが、既にある程度はありました。しかし、営業拠点では初めてのことでした」と後に全社BCMSの構築に深く関わる、品質・環境統括本部の山戸義幸(以下、山戸)は語ります。

「CSR推進室から“全社で”という話を聞いたとき、正直これは大変なことだと感じました」(山戸)

しかし、当時代表取締役社長(現会長)だった大内昭彦は、真木と山戸の背中を押しました。「BCMSは企業が社会的責任を果たすために必須であり、その目的から除外される拠点は一つもない。全社で取り組もう」と。

2013年4月、いよいよ全社BCMSの構築に向けて、社内各部署から選抜された7人による全社BCMS推進チームが発足されました。

「専門の外部コンサルタントなどに頼らず、自力でやりきることで社内での専門家を育てるべきだと思いました。将来きっと当社の財産になるはずです」(真木)

「原因事象」と「結果事象」の切り分けが行き詰まりを打開する道に

当時CSR推進室長(現社長)だった西尾弘之からは「2014年3月までに、全社のBCMSを構築する」との指示が明確に出されました。また、2012年に、BCMSに関する国際標準規格ISO22301*が発行され、その活用も決めました。規格に対応することで、BCMSをグローバルなレベルまで上げ、その客観性を担保するためです。

推進チーム内では、環境安全部 環境安全グループの油谷広記(以下、油谷)と西川健彦(以下、西川)が、新たなルールの素案づくりと、作業スケジュールの作成および管理に当たりました。しかし、早速困難に遭遇することになるのでした。

「BCMSは、実際に工場や拠点でやってもらわなければならないことが多数あります。日常業務に支障が出ないように、いかにそれらの作業を効率化するか。例えば、一つの演習を行うことで同時にさまざまなチェックができるような方法や、報告書の書き方などを工夫したのですが、現場からは“もっと分かりやすく指示してほしい”という要望が寄せられました」(油谷)

また、当初の予想どおり営業部門での取り組みにも難しさがありました。「私自身が営業出身なので、彼らの戸惑いはよく分かりました」と、総務・法務部 総務・管財グループの末田和(以下、末田)は語る。

「担当者にもよると思いますが、BCPやBCMSのことを考える機会はほとんどありませんでした。そういった方々に、いかにBCMSの必要性を理解してもらい協力いただくか。とにかく分かりやすい資料をつくることを心掛けました」(末田)

また、BCMSのルールづくりそのものについても、難しい問題に直面しました。

「とにかく決めなければならないことが膨大で、うまく整理がつかないのです。この災害のときはどうするか、この事象が起きたらどうするか、いろいろなケースが想定でき、対応を検討していくと、どんどん膨れ上がってしまう」(西川)

この問題を解決するうえで、大きなヒントになったのが「原因事象」と「結果事象」を切り分ける考え方でした。「原因はいくらでも出てきますが、それによってもたらされる結果は、例えば、“出社できる人員が限られる”とか“物を輸送できない”など同じになります。それまで原因事象で考えていたため、ルールが必要以上に複雑になっていたのです。これらを切り分ければ良いのではないかと気がつきました。実際に海外では、原因事象とそれに対する防災・減災、結果事象とそれに対する業務・事業継続、というようにBCPを二つに分けているということも知りました」(山戸)

  • ISO22301:地震や火災、ITシステム障害や金融危機、取引先の倒産、あるいはパンデミックなど、災害や事故、事件などに備えて、さまざまな企業や組織が対策を立案し、効率的かつ効果的に対応するためのBCMSの国際標準規格。