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特集 本業を通じたCSRの実践

特集 本業を通じたCSRの実践 次の世代のために今できることを環境に配慮した“ものづくり”

リンテックの原点であり、根幹となるもの—。それは“ものづくり”です。リンテックは、環境に配慮した“ものづくり”を通じて、社会的責任を果たしていきたいと考えています。本特集では、「無溶剤化」をはじめとした、リンテックの環境対応の取り組みを紹介します。

暮らしや社会の中で活躍する「貼る」「はがす」というコアテクノロジー

ラベルの構成図

ラベルの構成図

表面基材、粘着剤、剝離材の3層にはさまざまな種類があり、その組み合わせによって各種要求性能をクリアしたラベル素材が生み出される。

ぴったりと「貼る」(粘着)、そして、スムーズに「はがす」(剝離)。これらの技術は、“ものづくり”を根幹とするリンテックのコアテクノロジーです。
例として、シールやラベルなど、リンテックの主力分野である印刷関連粘着製品を見てみましょう。これらの製品は、印刷が施される表面基材、ぴったりと貼るための粘着剤、そして粘着剤を保護し加工適性を高める剝離材の3層で構成されています。表面基材の裏には粘着剤が塗られ、剝離材にははがれやすい処理が施された剝離紙・剝離フィルムが使われています。そして、この二つの素材は、どちらもがまさに表裏一体ともいえる重要な役割を果たしています。
表面基材がぴったりと貼れること、そして剝離材がスムーズにはがれること、これらはシールやラベルの品質を決める大切な条件です。

リンテックは、この「貼る」(粘着)と「はがす」(剝離)の二つの機能を的確にコントロールすることによって、社会のニーズにこたえる多彩な製品を提供しています。

リンテックの印刷関連粘着製品使用例
リンテックの印刷関連粘着製品使用例

リンテックの印刷関連粘着製品使用例

環境に配慮した“ものづくり”のために「無溶剤化」という開発テーマにチャレンジする

技術統括本部 研究所長 兼 製品研究部長 月田 達也

技術統括本部
研究所長 兼 製品研究部長
月田 達也

「この粘着剤や剝離紙を開発・生産するに当たって、重要な役割を果たしてきた材料があります。それが、トルエンや酢酸エチルといった有機溶剤です」
と話すのは、リンテックの研究所長である月田達也(以下、月田)です。有機溶剤とは、その名のとおり、ほかの物質を溶かす機能を持つ有機物の液体のこと。印刷関連粘着製品にとっては非常に有用な溶剤で、製品設計の過程において分子レベルでの合成や配合を容易にしてくれます。
また、剝離紙に塗られる剝離剤はミクロンレベル(1,000分の1mm程度)まで薄く均一にしなければならず、生産工程において作業性を高めるためにも有機溶剤で希釈することが欠かせなかったのです。
「ただし、有機溶剤は蒸発し気体として排出されると、環境に負荷を及ぼすという大きな問題があります。そこでリンテックでは、1994年から生産工程における排出ガスの大気放出削減をはじめとする取り組みを強化し継続的に進めてきました。
しかし、環境への負荷を減らす最良の方法は、有機溶剤を使用しない製品を開発・生産することです。“ものづくり”そのものを革新する、無溶剤化がリンテックの研究開発にとって大きなテーマの一つとなったのです。私自身、入社以来この無溶剤化に研究開発者として長い時間を注ぎ込んできました」(月田)

開発に向けて試行錯誤の日々。ある日、偶然見付かったブレークスルーの鍵

エマルション系粘着剤の模式図

エマルションのイメージ

無溶剤化の実現に向けて、リンテックが主に取り組んだのは「エマルション*化」という技術です。エマルション化では、材料の合成や希釈に水を用いるために、有機溶剤を必要としません。
「環境に配慮した“ものづくり”という観点からも、無溶剤化は全社的なテーマでした。無溶剤化に取り組んでいたころには、毎日のように役員から激励の電話がかかってきたものです。しかし、それを実用化するためには幾つもの壁を打ち破らなければなりませんでした」(月田)

特に大きな壁となったのが、粘着性と透明性を高次元で両立させる必要がある、フィルム基材用粘着剤の開発でした。そして、この壁を突破するきっかけとなったのは、一つの偶然からでした。
「ある日、紙基材用粘着剤の試験を行っていたとき、たまたま近くにあったフィルムでも試してみたのです。すると思いがけないよい結果が出て、"これは!"とひらめいたのです」(月田)
耐水性、粘着性、均一性、透明性など、地道な研究開発を進め、まず、汎用的な紙製品で無溶剤化を実現。その後も改良を重ねて高機能な製品へと広げていきました。
しかし、たとえどんなに高機能な製品を開発しても、お客様に使われず社会に広まらなければ価値がありません。そのため、無溶剤化では、新技術の開発とともに低コスト化も欠かせないテーマとなりました。
この難問に研究開発部門と二人三脚となって挑んだのが生産部門でした。生産本部長の小山貢二(以下、小山)は当時を次のように振り返ります。
「研究開発はもちろんですが、無溶剤化では生産工程の革新が大きな鍵を握りました。いかに作業性よく、低コストで実現するか。まずは既存の設備を改良することから着手しました」(小山)
そして、また新たな試行錯誤が始まったのです。

  • エマルション:乳濁液ともいわれ、液体の中に、混じり合うことのない他の液体が粒状になって分散している状態のもの。牛乳やマヨネーズなども その一例。

第一線のオペレーターの声を生かし、一つ一つ地道に改良を重ねていった

取締役 専務執行役員 生産本部長 兼 品質・環境統括本部管掌 小山 貢二

取締役 専務執行役員
生産本部長 兼 品質・環境統括本部管掌
小山 貢二

粘着製品の生産工程で心臓部ともいえるのが、紙やフィルムなどの基材に粘着剤や剝離剤を塗っていく塗工機です。粘着剤を塗布する際には、薄く均一に、かつ高スピードで塗布していかなければなりません。ムラができたり空気が混入したりすると、製品の不具合につながり信頼を損なってしまいます。
また、生産効率を高め低コストを実現するためには作業性も重要な条件です。それには、塗工機のスピードアップやセッティング時の操作性などの改善も必要となります。
「無溶剤化を実現するために必要な塗工機の開発で大きな力となったのが、生産工程を知り尽くしている第一線のオペレーターでした。彼らの声を生かしながら、不具合を一つ一つ解決して地道に改良を重ねていったのです」(小山)
このような改革の集大成となったのが、2004年に導入した新開発の塗工機でした。この新塗工機は、リンテックの“ものづくり”のノウハウを結集させた装置です。
「リンテックの“ものづくり”を支えているのは、技術と、そして人。それは、いつの時代でも変わりありません。無溶剤化でもまさにそのとおりです」(小山)
2012年度の印刷関連粘着製品における無溶剤化率(販売量ベース)は68%に達しています。缶飲料などに貼られるキャンペーンシール、卵の賞味期限ラベルなどにも無溶剤化製品が使用され、リンテックが全社を挙げて取り組んできた環境対応製品が暮らしの中で活躍しています。

“ものづくり”のすべてに及ぶ、環境配慮に向けたさまざまな取り組み

リンテックでは、現在も無溶剤化を継続して進めており、今後も可能な限り幅広い製品に広げていきます。また、有機溶剤が必要な製品についても、生産工程で発生する排出ガスを削減し、環境への負荷を減らす取り組みを行っています。具体的には、1994年から排ガス処理装置を順次設置し、現在では国内のすべての塗工機で、有機溶剤排ガス処理対応を実施しています。

常務執行役員 品質・環境統括本部長 山戸 義幸

常務執行役員
品質・環境統括本部長
山戸 義幸

「“ものづくり”におけるリンテックの環境対応の取り組みは、無溶剤化ばかりではありません。工場では、さまざまな側面から活動を進めています。その中でも大きな比重を占めるのがCO2排出量の削減でしょう。ボイラ設備の燃料を従来の重油・灯油から、CO2排出量の少ない都市ガスやLNG(液化天然ガス)へと転換したほか、生産工程で発生する排熱の再利用なども実施しています」
工場での環境負荷低減に向けた活動について、このように話すのは品質・環境統括本部長の山戸義幸(以下、山戸)です。さらに、環境負荷低減を視野に入れた取り組みは、原材料の調達から製品の廃棄・リサイクルまで、リンテックの“ものづくり”にかかわるすべてに及んでいます。
「つまり、LCA*という考え方です。当社では、このLCAに以前から取り組んできましたが、現在、"環境保全委員会"が中心となって、新たな活動を検討しています」(山戸)
その目的は、LCAを実践していくための分かりやすい指針をつくること。例えば、製品の設計段階でどのような原材料を選べば、環境負荷を低減できるのかといったことを、担当者が判断しやすいガイドラインづくりを進めています。

土居加工工場の排熱ボイラ
三島工場のLNGサテライト設備

環境への負荷を減らす取り組み。
左:土居加工工場の排熱ボイラ。右:三島工場のLNGサテライト設備。

  • LCA:Life Cycle Assessmentの略称。製品のライフサイクル全体を通じて使われるエネルギーや水、原材料の量や排出されるCO2、有害化学物質などを算出し、環境への影響を総合的に評価する手法。

持続的な成長を目指して、環境配慮型の“ものづくり”を次世代へとつなげていく

取締役 常務執行役員 経営企画室長 兼 CSR推進室長 兼 コスト改革本部管掌 西尾 弘之

取締役 常務執行役員
経営企画室長 兼 CSR推進室長
兼 コスト改革本部管掌
西尾 弘之

無溶剤化をはじめ、リンテックの環境対応製品は多様な領域へと広がっています。例えば、ガラス飛散防止効果と高い日射調整効果を兼ね備え、節電・省エネルギーに貢献するウインドーフィルム「ウインコス」。プラスチック成形品と同質同素材の表面基材を使用し、貼ったままリサイクルが可能なラベル素材「カイナス」。また、飛行機の機体などに使用され軽量化と省エネルギーを可能にする炭素繊維複合材料用の工程紙などにも、リンテックのテクノロジーが縁の下の力持ちとして活躍しています。さらには5年先、10年先を見据えた研究開発も進行中です。
リンテックの原点は、いつの時代でも技術であり、そして人です。リンテックでは、このような人の想いを一つにして、次世代の“ものづくり”につなげていくことを目指しています。また、CSR推進室と各部門の従業員たちがひざを交えて話し合い、持続的成長について一緒に考えていく「CSR懇談会」という取り組みも始めています。
「CSR懇談会はまだスタートしたばかりの取り組みですが、持続可能な社会とはどのような社会か、社会的な課題や問題点を自ら抽出し、本業の中で課題解決に取り組んでいこうとするものです」
と語るのは、活動を進めるCSR推進室長の西尾弘之(以下、西尾)です。
「今後はこのような機会を生かしながら、“ものづくり”を次世代へとつなげていき、社会と企業の持続的な成長を目指していきたいと考えています」(西尾)
未来に向けて、リンテックの“ものづくり”は、これからも挑戦し続けます。

Close Up

こんなシーンにも。リンテックの主な環境対応製品

「ウインコス アーキテクチュアルフィルム」日射調整(透明)タイプは、窓ガラスに貼るだけで省エネルギーを可能にする建物用ウインドーフィルムです。高透明ながらも太陽日射熱を35~63%も遮断することにより、冷房効率を改善し、高い省エネルギー効果を実現します。

また、紙のリサイクル過程で離解可能な粘着剤を使用した「全離解可能粘着紙」や、しっかり貼れてきれいにはがせる「REPOP(リポップ)」など、プラスチック容器のリユースやリサイクルに対応したラベル素材も豊富です。